INTERPRETATION

第626回 試行錯誤は続く

柴原早苗

通訳者のひよこたちへ

「嬉々として取り組み始めてしばらく続けたものの、やめてしまったこと、ありますか?」

みなさんならこの問いにどう答えますか?私は正々堂々と「YES!!」と言えます。先日の当コラムに「熱しやすくて冷めやすい」との自己評価を書きましたが、それが日々の行動にも反映されているのでしょうね。「やめてしまったこと」は日常生活に色々とあり、今日はそのお話です。

その筆頭にあがるのが、「一週間分の献立作り」。かつては週末にレシピ集をひっくり返しては、翌一週間分の夕食献立を決めていました。「月曜日は肉じゃが」「火曜日はパスタ」「水曜日は煮魚」という具合。こうして肉魚野菜のバランスを取っていたのです。食材の買い物日も決めて、その通りに暮らしていました。小学校の給食献立表のような感じです。

この方法は数年間続いたのですが、ついに先日ギブアップ!何しろ、いくら事前に考えたとて、その日の夕方に「決めておいたメニュー」を食べたいとは限りません。「今日は疲れたから肉料理よりもあっさりしたものが良いなあ」と思うも、献立に縛られてしまうのはストレス。それでやめたのでした。その結果、今は仕事帰りに自分の「お腹」と対話をし、食べたいものの食材を買って帰ります。冷蔵庫に入れないまま、すぐに調理できますし、それほど手の込んだものを作らなければ30分ぐらいで夕食完成!食べたいものを自力で短時間で作ったことで自己達成感を味わえます。

もう一つ、最近になってやめたのは「ラジオ体操」。昨年、たいそう意気込んでラジオ体操にはまり、指導者資格まで取得しました。一番入れ込んでいた頃は、テレビ・ラジオの体操番組すべてをチェックし、取り組んでいたのです。週末に少し寝坊したいときでさえ、時間になると起きる始末。確かに健康的かもしれませんが、強迫観念過ぎると辛くなります。規則正しくおこなうのも良いのでしょうけれども、「できる時だけ」にしたおかげで、気持ちが楽になりました。

ちなみに最近自分の中で意識している標語は、「違和感あるなら見直そう」です。たとえば我が家のサイクロン式掃除機。スリムで軽くて便利なのですが、ダストカップのゴミ交換の頻度が高く、そのたびに埃が舞ってアレルギーの私には辛いのですね。使うたびに「なんだかなあ(溜息)」となるなら、たとえ「まだ使えるもの」であっても見直すべきと考えました。

断捨離提唱者・やましたひでこさんの本には、モノとの付き合い方だけでなく、人間関係も見直すべき、とありました。一緒にいてもちょっと引っかかってしまう相手がそれに相当します。こちらの気持ちを伝えても双方の歩み寄りが見られないのであれば、我慢し続けるのも不毛というわけです。

通訳の勉強法も私自身、あれこれと試しながら歩き続けています。結局、学習法も人生も試行錯誤の連続なのでしょうね。

(2024年3月19日)

【今週の一冊】

「ズボラさんでもできる!はじめての断捨離」やましたひでこ著、宝島社、2021年

本書が刊行された2021年はコロナの最中。おうち時間が増えて私たちの生き方・働き方が見直された時期でした。幸い宅配などのおかげで日常の買い物も続けることができましたが、その一方で、ストレス解消に買い物に走った、という声も少なくありません。その結果、増えるモノの中で在宅ワーク、というケースも聞こえてきました。

本書を執筆されたやましたひでこさん。私は毎週火曜日放映のやましたさんの番組が好きで欠かさず観ています。私自身、子どものころから「煮詰まると片づける」がルーティーンとなっており、試験前の現実逃避時期などはまさに片づけ祭と化していたのですね。よって、断捨離自体はかねてから興味があり、今も続けています。

タイトルには「はじめての」とありますが、だいぶモノを減らした私が読んでみても、まだまだ断捨離の世界は奥が深く、出来ることが多いと気づかされます。私を含め「処分するか否か」で迷う最大のハードルは「もったいなさ」。ゆえになかなか手放すことが出来ないのです。

でも、本書に出ている考え方を読むと、決断を後押ししてもらえます。一度きりの自分の人生です。納得のいくモノに囲まれて暮らす幸せが見えてくると思います。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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