第139回 タイマー活用法
私はここ数年、キッチンタイマーを愛用しています。授業や通訳現場などでも大活躍です。たとえばクラスの中でグループやペアワークをさせる際には時間を区切って作業をさせます。一方、同時通訳のブース内では10分あるいは15分という具合に交代する時間を決めますので、その際にもタイマーは欠かせません。
現在愛用しているタイプは台所用タイマーとして市販されています。キッチンタイマーにも色々あり、「分」「秒」ボタンを押し続けるものや、数字の0から9まで書かれているテンキータイプがあります。私が使っているのは後者です。なぜならば10分以上の時間を押す際にはテンキーの方が押す回数が少なく、セットしやすいからです。ボタン電池で動くので、電池の予備も普段からストックしています。
今回の本コラムでは、タイマーの具体的活用法をいくつかご紹介します。
1.キッチンタイマーとして
「キッチンタイマー」というぐらいですので、本来は台所で用いると言えますよね。わが家はなるべく台所を広く使いたいため、家電は最小限に抑えています。トースターは持っていないので、パンを焼く際にはグリルを使います。タイマーのセット時間は1分ほど。これでこんがりトーストができます。また、ティーバッグを蒸らす際にも時間をセットしています。ちなみに時間経過の間はお皿を拭いたり、シンクの汚れを落としたりという作業にあてています。大掃除と考えると億劫なことも、2分と時間を区切ることで割り切って取り組めます。
2.ネット制限時間
「息抜き」と称してついついダラダラと見てしまうインターネット。この対策としてタイマーを使っています。「10分だけ見る」と決めたらその時間をセットし、堂々と(?)休憩するようにしています。罪悪感と共に息抜きを味わうぐらいなら、時間をしっかり決めて存分に休んだ方が気分もすっきりすると個人的には思っています。
3.出発時間の合図
私のタイマーは「残り10分」「残り5分」で鳴るようになっています。外出の予定がある日はタイマーをかけて、出発までの合図にしています。あと10分になったら戸締り・火の元の確認、あと5分の音が鳴ったらコート、鞄、鍵などを玄関に置き、出発に備えます。電車に乗り遅れないためにも、このリマインダー音は本当に助かっています。
4.問題を解くときに
たとえば検定試験の問題集を解いているとしましょう。みなさんは難しい問いに直面したとき、何分ぐらい考えますか?明治大学の齋藤孝教授は「5分考えても分からなかったら答えを見る」のだそうです。なぜならそれ以上考えても答えが出るというケースは少なく、考えている時間がもったいないからだそうです。私もそれにならい、難問にあたったときは5分だけタイマーをセットし、それでも回答を思いつかなければ潔く答えと解説を読むようにしています。
5.資料の読み込みに
通訳者は業務に先立ち大量の資料を読み込まなければなりません。クライアントから頂く書類のみならず、自分で入手した参考文献やネットから印刷したものもあります。一字一句ていねいに読んでいては時間が足りませんので、私はタイマーをかけて読むようにしています。たとえば「この資料は重要そうだから○○分かけよう」「こちらは図が多いので△分で読めそう」という具合にざっと見積もってタイマーをかけるのです。緩急をつけて読むことで、なるべく多くの書類に目を通したいと思っています。
いかがでしたか?今回はタイマーの使い方についてお話しました。読者のみなさんの中で「こういう工夫をしています」という方がいらっしゃいましたら、ぜひハイキャリア編集部にお知らせくださいね。このコラムでもご紹介したいと思っています。
(2013年11月11日)
“Conference Interpreting: A student’s Practice Book” Andrew Gillies, Routledge, 2013
日本には通訳者になるための書籍やムックが多数発売されている。一方、海外に目を向けてみると、日本ほどはないような印象だ。学術的な論文は多いのだが、手軽に読める本は少ない。パラパラとめくって概要だけでもつかみたいという場合は、日本の書籍の方が手軽なのである。
そう思っていたところ、巡り合ったのが今回ご紹介する一冊。学生向けなので英文も平易であり、箇条書きになっているので実に読みやすい。通訳者を目指す大学生が本書の対象読者となっている。
元々この本はポーランドで数年前に別の出版社から発行されており、ポーランド国内でしか流通していなかったとのこと。著者のGillies氏はEUなどをメインに活躍するフリーランス通訳者なのだが、後進たちのためにと加筆した上で、Routledge社から本書をあらためて発行した。
目次を見てみると、教材の選び方、フィードバックの仕方、訳出法やメモ取り、リテンションの訓練法など、多様な方法が紹介されている。自分一人でできるものもあれば、仲間を募って行えるトレーニング法にも言及している。
文体は、通訳者を目指す人たちを励ますものであり、中でも興味深かったのが、「難しすぎる教材はやる気を失う」「疲れたときは無理をしない」などという文章が頻繁に出てくる点である。通訳の勉強は長丁場であり、一生続く。だからこそ、あせって結果を求めるのでなく、コツコツと取り組むことが大事なのだと著者は言いたいのであろう。
巻末には通訳に関する参考文献がたくさん紹介されている。ノウハウを知りたい、あるいは学術的に通訳という学問について研究したい人には大いに参考になると思う。
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