INTERPRETATION

第482回 小さな工夫も快適さへ

柴原早苗

通訳者のひよこたちへ

先日から片付けにはまり、少しずつ断捨離を続けています。こうして改めて見てみると、本当にたくさんのモノが我が家にはあるなあと思います。

参考にしているのは片付けや断捨離、ミニマリストさんたちのブログです。どのようにして処分したか、捨てる基準は何かなど、とても参考になります。それに触発されて、少しずつ進めている所です。

先日、見直してみたのは次の二つでした:
*革製のペンケース
*自立型ペンケース

前者は万年筆やスペアインク、蛍光ペンを入れて持ち歩いていました。さんざんネットで探してお気に入りのピンクを買ったのですね。しかも国産品にこだわっていたので、ようやく見つけた時は本当に嬉しかったです。

けれども、使っているうちにあることに気づきました。

私のカバンは結構重くなりがちで、ほんのわずかなものでも、入れればそれなりに重量につながります。さらに、出先でいざ万年筆を使うとなると、「ペンケースを出す→ふたの部分のボタンを2つ外す→万年筆を出す」という3アクションが必要となります。ペンケースを買う前は蛍光ペンを持ち歩かず、万年筆もノートに指しっぱなしでした。つまり、ペンケースがあることで、作業工程が増えてしまったのですね。さらに気づいたのは、蛍光ペンを持ち歩いている割には、出先で使うことがほとんどない、ということでした。スペアインクも同様で、確かに持ち歩いていればいざ無くなったときに便利ですが、それ以外に私は4色ペンを常に持っているため、いざ万年筆のインクが切れても、代替品はあるわけです。

というわけで、ペンケースを持ち歩くことはやめました。蛍光ペンに関しては、仕事で必要なときのみ、引き出しから出してカバンに入れれば良いのですよね。

で、空になった革ペンケース。処分するのはもったいないなあと思って試行錯誤したところ、印鑑と朱肉を入れるのにぴったりでした。印鑑を使うことはめったにありませんので、これらを入れて机の引き出しに入れておくことにしたのですね。引き出しを開けるたびに美しいピンクの革ペンケースを目にすることになりますので、お気に入りのもので癒されています。

一方、自立型ペンケースですが、こちらには定規、ハサミ、カッター、ノリ、修正液、消しゴム、マジック、蛍光ペン、ホチキスを入れて机の上に置いていました。自立してくれるので、ペンなども取りやすかったのですね。けれどもそれを常に机の上に置きっぱなしとなりますので、それだけで机のスペースが多少なりといえども奪われることになりますし、拭き掃除がしづらくなります。

そこで改めて見直した結果、机の引き出しにそうした文房具はバラで保管することにしました。一方の自立型ペンケースは可愛い色でしたが、思い切っていったん処分しました。しかしその数日後、仕事に必要なメガネ、タイマー、イヤホン、スマホ充電池などを入れるのにぴったりだったことに気づき、「チャリティショップ行き段ボール箱」から「復活」させた次第です。

ちなみに私はノートパソコンに有線イヤホンを挿し込んだままにしていたのですが、これも抜くことにしました。イヤホンが必要なのは、ZOOMの授業と音楽を聴くときだけです。なのに挿した状態ではコードが邪魔になるのですよね。これも「必要なときに引き出しから取り出して挿しこむ」というルールを決めました。

今、迷っているのはデスクライトです。これまで何の疑いもなく、「机に座る→デスクライトを点ける」ということをしてきました。でも、窓からの光で十分明るいこともありますし、朝から点灯させるとかえってPC画面が光ってまぶしいこともあったのですね。今、この原稿を書きながらあえてデスクライトはオフにして作業をしていますので、果たしてどこまでこれが可能か試してみるつもりです。考えてみれば、夕方以降は部屋のライトを点けるわけですし。

ほんの少しでも快適に作業できるようにするためには、小さな工夫も大きな生産性につながるように思います。諦めずに続けていきたいです。

(2021年3月2日)

【今週の一冊】

「それって、必要?いらないものにしばられずに、1週間で人生を変える30の方法」筆子著、KADOKAWA、2017年

片付けをするにあたり色々とヒントを探していた所、偶然見つけたのがブロガーの筆子さんです。現在カナダ在住、ミニマリストとして片付けのヒントをたくさん披露しておられます。その考え方や処分基準など、本当に参考になりました。それでこの本も読んでみようと思ったのですね。

モノを捨てるというのは、ある意味で自分と向き合うことだと思います。モノの中には自分を作ってくれたもの、自分を支えてくれたもの、楽しい思い出のものなどがあります。その一方で、見るたびに辛くなったり、そのモノに触れただけで心の中がざわざわしてしまったりというものもあります。保管しているけれど触ったり見たりしたことがここ数年間ゼロというものもあるでしょう。そうしたものとどう対峙するかが本書には書かれています。

印象的だったフレーズをご紹介します。

「老後が心配で、日々ガチガチに節約している人は、いまを生きていないと言えるかもしれません。その人の現在の生活は、将来に起こるかもしれない未知の恐怖に左右されているからです。」(p156)

確かにそうですよね。数週間前に大きな地震があったように、いつ我が身がどうなるかはわからないのが人生です。もちろん、倹約したり備えたりというのは大切ではあります。でも、「不安」を拡大解釈してしまうと心が安らぎを得られなくなりますよね。

「心配は自分が頭の中でつくり上げていること」(p168)

人間は考えすぎるがゆえに苦しんでしまうのでしょう。「考えすぎ」もそれこそ「考えもの」です。

私は本書を読んで、これまでの自分の文章(掲載誌)や仕事資料を処分しました。箱に入れたまま見返すことがなかったからです。よく今まで保管してたなあと苦笑いしてしまったほどです。

この春はもう少しモノを処分するつもりです。一度捨てると弾みがつきますので、どんどん進めたいと思っています。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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