第91回 最近寄せられた学習相談から(その2)
先週に引き続き、今回も英語に関する相談をご紹介いたします。
質問: 「教材を一日に二日分こなしても良いですか?」
回答: これは日割り式のテキストや通信講座などの学習者からよく寄せられるお尋ねです。「一日何ページ」と学習量が決まっており、そのペースで進めれば一定期間後には教材が終了できる仕組みです。
このような相談を寄せる学習者は、以下のタイプに分かれます:
1.思っていたよりも教材がやさしいのでペースを上げたい
2.学習に費やせる時間が不規則なので、できるときにチャッチャとやっておきたい
まず「1」のタイプから見てみましょう。「購入したテキストをいざ始めてみたら、案外簡単だった」ということは確かにありますよね。「なんだ、こんなにスラスラできるのなら、「一日5ページで一か月完成」よりも、「10ページ進めて半月で終えたい」と思う気持ちも分かります。
けれどもこれには落とし穴があります。どのテキストも最初の数ページは基礎的な内容が書かれているのです。よって、誰でも取り組みやすい素材になっています。つまり、「簡単だから」と最初からペースを上げた場合、「テキストの中盤で急に難しくなってしまった」ということにもなりかねません。
難易度の高い設問に直面しても、くじけずに最後まで続けられれば問題ないでしょう。けれども「あんなにペースを上げられたのに」と自分のふがいなさに目を向けてしまうと、勉強のモチベーションも下がってしまいます。
ではどうすれば良いでしょうか?考え方としては、
(1)途中でペースダウンをすることに罪悪感を抱かない
(2)最初からペースを上げ過ぎない
このどちらかです。はやる気持ちを押さえて指定されたペースで最初から進めれば、いずれはテキストを完成させられます。けれども色々な事情で最初にピッチを上げていたのであれば、臨機応変に対応し、ペースを落とすことも大事です。その際には、学習スピードを減速することに罪悪感を抱かないよう、そして自分を責めないようにしてください。
次は2つ目の相談、「学習時間が確保できないので、出来るときにやっておきたい」です。「今週末は丸々空いているから、7時間は英語学習!」ということもありますよね。
しかし、こちらも1の相談同様、注意が必要です。確かに「出来るときに出来る限り進めておく」というのは一見合理的です。でもジョギングで例えたらどうでしょうか?
「いつもは毎日5キロ走るけれど、今日は10キロ走れるから走ろう。その代わり明日は休む」
というのと
「やはり体が慣れておくには毎日少しずつ走った方がペースもつかみやすい」
という考えがありますよね。あるいは食事はどうでしょうか?
「今日はお腹が空いているから明日の分の食事も今、食べておこう。」
まさかこのような考えで今日大量に摂取して明日は絶食、などということはないはずです。
英語学習もこれと同じなのです。大事なのは「当たり前のことを当たり前のようにコツコツやること」、すなわち少しずつでも良いから毎日英語の勉強を続けていくということなのです。間が空いてしまえば、前に学んだことをまた思い出さねばなりません。それには時間がかかるのです。けれども毎日続けていれば、前日の学習内容もすぐに思い出せます。
世の中には「これさえやれば効果抜群!」「○○だけ!!」という、一見魔法のような学習関連本がたくさんあります。けれどもスポーツや食事に置き換えてみれば、英語の学びが非常に地味でひたすら継続のものである、ということがお分かりいただけるのではないでしょうか。
(2012年10月22日)
タイトルそのものが実に単刀直入。これまでなかなか体重を落とせなかった勝間さん自身がどのようにやせていったか、その体験が綴られている。単なる「やせるための本」ではない。勝間さんは運動や栄養学、料理本など「やせる」をキーワードに多数の本を読破し、ブックレビューも兼ねた一冊にしている。今までのダイエット本は「この方法さえやればあなたもみるみるやせる!」的な内容が多かった。けれども勝間さんらしく、大局観に「やせる」というトピックを俯瞰し、自らの経験を惜しみなく披露している。
通読して思ったのは、やせることも英語学習も基本的には同じであるということ。つまり、「当たり前のことを当たり前のこととして地道にコツコツ続ける」という点である。英語学習が「地味な作業を毎日愚直に続ける」のが結局は早道だと私は思っているのだが、ダイエットもしかり。栄養を理解し、身体を動かし、身体に良いものを摂取する。その継続のみなのである。
勝間さんの強みというのは、自らの失敗も正直に記しているという点である。何かに成功した人物というのは、とかく失敗の部分を隠しがちだ。しかし勝間さんが「600キロカロリーくらいは食べてもいいよね」と自分に言い訳をして、ドーナツを昼食代わりにしていたというくだりは、読者にとってもなじみがあるエピソードではないだろうか。
忙しい現代人がどのようにすれば運動時間を確保し、身体によい食べ物を自分で作れるようになるか。時間管理にまで言及したダイエット関連本は本書が初めてだと思う。
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