第77回 最近のフランス語学習
私は数年前からフランス語を独学中です。厳密には通信講座を受講しており、週1回、先生と電話レッスンを行うという学習法です。フランス語は幼少期にイギリスで暮らしていた頃、学校の授業で取ったのですが、その後ずっとご無沙汰していました。フランス語の「音」に魅了されていたこと、また、放送通訳という仕事柄、フランス語のニュースも理解できたらというのが勉強の動機でもあったのです。何とか挫折せず、現在まで続いています。
ただ、学び初めのころは自分なりのペースがつかめずにいました。講座のプリントを頑張りすぎて取り組んだ結果、燃え尽きて数日ご無沙汰ということもありました。けれども最近は「とにかくコツコツと5分でも良いから毎日進めること」を念頭に机に向かっています。そこで今回は、辞書の活用など10個のポイントをご紹介しましょう。
1.紙の辞書は机の左側に置く
私は視認性のある紙の辞書が大好きで、英語もフランス語も家ではもっぱら紙版を使用しています。使う時は机の左側に置き、なるべく左手で引きます。目の前には講座のプリントがあり、右手で書き込みができるからです。
2.目的の単語のアンダーラインは4回に分けて
未知の単語を初めて引いたら、まずはその見出しの下に線を引きます。後日同じ単語を引いたら、今度は単語の上に線を引いていきます。さらにしばらく間を置いて引いたら見出しの左に、今度は右にという具合に引いていくと、その単語の周りを4本の線が囲むことになります。こうすることで自分が少なくとも4回はその語を引いたことが分かります。何度も引くということはそれだけ重要単語であることが分かり便利です。
3.語義は一通り斜め読みする
紙の辞書の長所は、斜め読みができることです。ざっとその単語全体の説明に目を通し、できれば太字で書かれている語義はしっかりと頭に入れます。意味がたくさんあればあるほど、重要な語であることが分かります。
4.目的の語義が見つかったら例文を音読
語義全体の斜め読みが終わったら、自分が探している意味に焦点を当てます。例文は出来る限り音読することで、様々な用法を体に染みこませるようにします。私の場合、例文を読む際は「日本語→仏文」と音読するようにしています。そうすることで、先に意味を押さえてから例文を読むので頭に入りやすいようです。
5.例文にツッコミを入れる
例文を読んでいると、同じ名前の人が出てきたり、例文も悲喜こもごもだったりします。楽しい例文の際には「いいねえ」、悲しい例文の際には「あら大変!」などと私は一人ツッコミを入れるようにしています。例文の主人公と対話(?)するのも楽しいものです。
6.巻末の動詞活用表はフル活用
フランス語は動詞の活用が複雑です。不規則動詞だけでもたくさんあり、一つ一つ覚えなければなりません。幸い紙の辞書の巻末には活用法がすべて書かれていますので、プリントに出てくるたびに巻末の活用法を参照し、プリントの余白に書き写すようにしています。その際には音読しながら書き写しています。
7.形容詞・女性・男性形にも注意
フランス語の名詞には女性形・男性形などがあります。また、形容詞も語尾変化があり、いずれもひとつひとつ覚えなければなりません。ですのでテキストに出てくるたびに辞書で確認し、書き写しています。
8.似ている英語はないか考える
フランス語と英語はかなり共通点があります。そこで私は仏文を読む際、英訳できないか考えるようにしています。複雑な構文等を読み解くときには和訳するよりも英訳で考える方がすっきり理解しやすいこともあります。英作文のトレーニングにもなっています。
9.身近なフランス語を探す
たとえば輸入食材にフランス語が書かれているときはしっかり読むようにしています。ジャムのパッケージやベーカリーのナプキンなど、意外なところにフランス語が出ているのです。辞書があるときには引いて調べます。これも単語力増強につながると思っています。
10.とにかく楽しむ!
語学学習というのは修行でも苦行でもありません。学んでいる本人がどれだけ楽しめるか、それが大きなモチベーションにつながります。私の場合、日常生活でフランス語が必要とされる場面は皆無に等しいですが、フランス映画を観たり、フランス絵画展で説明を読んでみたりと、自分なりに楽しいことを取り入れるのが語学学習には大切だと考えています。
いかがでしたか?学びというのは日常生活に多くの喜びと潤いをもたらしてくれます。今回ご紹介した内容が、みなさんの語学学習のお役に立てれば幸いです。
本書は日経新聞の夕刊に紹介されていた一冊。日経では週1回、書評のコラムがあり、色々な分野の専門家が3冊ずつ紹介している。
著者の荒島氏は映画関連の仕事を経て「映写技術者」となり、現在は浅草新劇会館に勤務している。私たちは映画館で作品を観る際、前方スクリーンしか見ていないことがほとんどだ。けれども座席最後列の後ろの小窓の向こうで働く人、それが映写技術者なのである。
映写技術者というのは、映画「ニュー・シネマ・パラダイス」をご覧になった方ならどのような仕事かお分かり頂けると思う。ただ現在の映写技術者は単に映画を映し出すだけではない。ピントを合わせたり、明かりや空調を調節したりと忙しい。しかも繁忙期は入口でチケットを切ったり来場者プレゼントを配布したりすることもあるのだそうだ。
本書を読み進めると、映写技術という仕事自体が、今でも手作業的な要素を含むことがわかる。これだけデジタル化の時代になっているので、ボタン一つですべてスムーズに運ぶイメージがあるのだが、まだまだ人間の勘や手に頼るところが大きい。
しかし荒島氏は次のように述べている。
「十年後には、フィルム上映は今の半分以下になっているだろうと言われています。(中略)もしそうなれば、もはや映写技術者は必要なくなるでしょう。」
そう、通訳者同様、デジタル化・機械化の波は着実に押し寄せてきているのだ。音声認識ソフトや機械通訳が普及すれば、私たち通訳者は和文タイピストや速記者のようになってしまうのではないか。個人的にはそうした危機感を私は抱いている。
けれども荒島氏が「(デジタル機械が)全世界に普及するにはまだまだ時間がかかります」と言うように、まだ私たち通訳者も「来たるべきその時」に備える猶予はあるはず。大事なのはそうした新技術を軽んじず、また、自分の通訳力に慢心せず、精進していくことだと思っている。
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