第379回 10秒基準
当コラムをお読みくださっている皆さま、新年のご挨拶を申し上げます。今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。皆さまにとりまして2019年が幸せに満ちた一年となりますよう、お祈りしております。
さて、読者の皆さま、今年一年の目標はお考えになりましたか?私は4月始まり手帳を使っているため、自分にとっての新年は春という感覚を抱いています。ただ、そうは言えどもせっかく新しい数字の年になったわけですので、自分なりに一年の計を立て、それを軸に丁寧に暮らしていきたいと思っているところです。
昨年を振り返ってみますと、秋以降が実にあわただしい日々となりました。今まで以上に仕事の機会を頂戴したのはとてもありがたく、新たな世界が開けたのは自分にとっても大いに刺激となりました。ただ、その分、日常生活において常に自分自身がセカセカしていたようです。話すのも食べるのも歩くのもすべて速く、という具合でしたね。これでは心身が休まりません。反省しました。
偶然にも昨年の終わりにSusan Cainさんの動画と出会えたこともあり、穏やかに、静かに生きることの大切さを、自分の生き方に取り入れたいと思い始めました。目下実践しているところです。
その一方で、通訳者として必要な「好奇心」及び勉強や家事などへの「モチベーション」も大事にしたいと考えます。私の場合、くたびれてくると何かと言い訳を考えようとする習性があります。それを払拭し、自分なりに克服して毎日を大切にし、昨日よりも今日、今日よりも明日、数ミリでも良いので前に進めればと思います。
そうした中、先日たまたま立ち寄ったコンビニで興味深い書籍を目にしました。タイトルは忘れてしまったのですが、ビジネス書だったと思います。その中に、ビジネスで成功する人は10秒を基準にしているとありました。
この10秒という数字が私にとってはインパクトがあり、以来、この数字を心がけています。たとえば、家事にしても仕事にしても、「10秒で仕上げられるよう工夫する」「10秒間も『やらない言い訳』を考えているぐらいなら、とりあえずさっさと着手する」という具合です。
長いようで短い10秒ですが、特に私の場合、「やろうかなあ、でも・・・」と心の中で躊躇し始めたらむしろ「えいっ!」と掛け声をかけていっそのこと取り組んだ方が後々良いように感じます。
「穏やかに、静かに」と「10秒ルール」は一見対極にあるようですよね。けれどもサボろうとする自分を律する上で10秒という基準は私にとって分かりやすく思えます。あくせくするのではありません。静かに10秒で物事を決めて丁寧に日々を過ごしたいと思います。その積み重ねをすることで、通訳者として、社会人として、少しでも世の中のお手伝いができればと思います。
2019年が始まりました。さあ、エンジンをかけてスタートです。
(2019年1月1日)
昨年の終わりのこと。私にとって大きな出会いがありました。TEDトークです。たまたま授業用教材にと動画を探していた際、見つけたのがSusan Cainさんという方のトークでした。内向型の人にも目を向けてほしいというメッセージに私はすっかり魅了され、20分間の動画から大きな勇気を得たのです。このコラムで昨年終わりにご紹介しています。
今年の一冊目として皆さまにぜひお手に取っていただきたいのが、そのケインさんの書籍です。本書は10代向けに書かれており、英語も平易な文体となっています。また、Grant Snider氏のイラストも可愛く、アプローチしやすい一冊です。
プレゼンの上手さや「人の印象は数秒で決まる」といったことが良しとされる昨今です。けれどもかつての「人の評価」はむしろ内面でした。その人の内なる部分から醸し出される魅力に、人々は以前であれば注目していたのです。だからこそ、今、この時代において「表ではなく中に注目してほしい」というケインさんの考えは、多くの人を勇気づけています。同調圧力がとりわけ強いと言われる日本社会において、本書から学べることは多いと私は考えます。
本書には10代のアメリカやカナダ在住の子どもたちの体験談が掲載されています。どの子たちも内向的という共通点はありますが、そこからどのようにして自分らしさを見出し、強く生きるようになったかが紹介されています。大人が読んでも励まされます。また、巻末には教育関係者や保護者にも参考となる項目があります。内向的な子どもたちへの接し方や能力の引き出し方など、具体的なヒントが満載です。
私自身、仕事を通じて人前に立つことが増え、大きな声で話すことに慣れては来ました。けれども幼少期から大人になるまで実は内向的でした。今でも大人数の会合などより一人でいることを好みます。お一人様ということばが出てきてホッとした一人でもありますが、何となくこれまで「一人でいること=わがままなのでは?」という引け目を感じてもいたのです。
けれども外交的な人と内向的な人がいるからこそ、世の中は面白いのですよね。内向型人間への見方が変わる、本書はそんな一冊だと思います。
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