INTERPRETATION

第9回  若いあなたのために

原不二子

Training Global Communicators

日本は未曽有の大震災と津波、さらに原子力発電所の事故に見舞われ、多くの方が亡くなったり、行方不明になったりしたまま1か月が過ぎました。幸い命を取り留めた方の多くも家屋や生活の手段を失い、今後の生活に大きな不安を持っておられます。また、被災地でなくとも、風評により日本産の農水産物が多くの国で輸入禁止の対象になっています。このようなとき自分に何ができるのか、と思う方は少なくないと思います。

先日、1人の農家の青年を取り上げているテレビ番組を観ました。自宅の農地は再び農作物を生産できないまでに放射能で汚染され、消防の手伝いをしていた彼。被災者の間に「野菜が欲しいけれど手に入らない」という悩みがあることを知り、自ら野菜を仕入れて被災地へ運ぶことにしたそうです。商品にならないキャベツを農家から譲り受け、それを配っていました。「命があっただけでもありがたい。これでどんな目にあおうと生きていく自信がついた」と明るく語る本人。彼のような方がきっと大勢いることでしょう。

明日何が起こるか分らない今だからこそ、親兄弟(姉妹)、夫や妻に頼るのではなく、1人ひとりが自分で生きていくことのできる技量や力を身につけておくことの大切さを思わずにはいられません。人から言われたことを瑕疵なくこなすことより、状況を見据え、自分ができることを見出し、行動していくことが大切であると思います。今こそ自分を一番活かすことができる技を磨く最善の時なのです。                               

原 不二子

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原不二子

上智大学外国語学部国際関係史研究科博士課程修了。 祖父は「憲政の父」と呼ばれた尾崎行雄、母は「難民を助ける会」会長の相馬雪香。母の薫陶により幼い頃からバイリンガルで育ち、21歳の時MRAスイス大会で同時通訳デビュー。G7サミット、アフガニスタン復興会議、世界水フォーラムなど数多くの国際会議を担当。AIIC(国際会議通訳者協会)認定通訳者で、スイスで開催される世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)、ILO総会の通訳を務め、最近では、名古屋における生物多様性(COP/MOP)会議、APEC女性リーダー会議、アジア太平洋諸国参謀総長会議、ユニバーサル・デザイン(IAUD)会議、野村生涯教育センター国際フォーラム等の通訳を務めている。

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