INTERPRETATION
第7回 情報を心の糧に
今の私は何処で何をしていることが一番良いか思い悩み、故郷である福島県相馬地方をはじめとする被災地のために何かしたいのに、それが儘ならないことに苛立ちを感じています。「最善を尽くす心構えとその備えさえあれば、必ずそれを用いる機会が来る。用意がなければ、チャンスが訪れてもそれに気づかず、機会が与えられないと嘆くことになる。」という亡き母の言葉を思い出し、今一番いいと思うことを懸命にすることが重要であると気をとり直しています。与えられた条件の中で最善を尽くすことは通訳者としての当然の心構えですが、これは日常にも相通じると思います。
戦後の目を見張る復興、それに次ぐ経済成長を遂げた日本。未曾有のマグニチュード9.0の東日本大地震は、世界情勢とかけ離れ、平和を当たりまえのことと甘んじてきた私たちに警鐘を鳴らしています。今回、各国からの救助支援の申し入れを有り難く受け入れたことは、通訳がいない、雇うお金がないなどの理由で支援を拒んだ阪神淡路大震災と比較すると大きな前進と言えますが、諸外国から情報の透明性を指摘されるようでは、人命救助より、日本の面子を重んじる悪弊が蔓延っている現実を露呈しています。
正確な情報を迅速に提供することは国民の生命と財産を守る立場にある政府の勤めであり、またそれを正しく理解して各々の行動に繋げることが国民1人ひとりの責任であると思います。「情報は心の糧」になると思います。
内容に乏しい言葉を並べるだけの記者会見が多く見られますが、言葉だけを数珠つなぎに並べるのではなく、情報をきちんと伝達しなければ通訳者としての務めは終わらないことを改めて心に刻んでいます。
原 不二子
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