第6回 こども教育の在り方
今回は、グローバル・コミュニケーションや異文化間コミュニケーションに興味のある方、その分野で仕事をしておられる皆さんに必読の本を紹介します。太田裕子著「日本語教師の『意味世界』―オーストラリアの子どもに教える、教師たちのライフストーリ―」(ココ出版)です。
子どもに対する日本語教育は「ことばを教えること」と「全人的教育を行うこと」を統合し、異文化間で柔軟に適応する能力を育成することにある、という内容です。
「ことばの教育と全人的教育を統合することにより、異文化や他者に対する理解と寛容さを発達させ、他者とのかかわり方や生き方を学ばせることを目指している。異なる言語・文化を持つ他者との関係を築くためには、他者を個人として受け入れて、共感し、尊重する姿勢と共に、他者とコミュニケーションを図り、お互い理解し合うためのことばの力が必要となる。まず教師が子どもをそれぞれ個人として受け入れることで、子どもも自分自身を個人として認識できるようになる。そうすることで、子どもは初めて他者をも個人として受け入れることが可能になる。言語教育は異文化社会で生きる能力を育成するためのものである。」
ここまで読んではっとしました。日本では、子どもは親の付属物、所有物とさえみなされています。親子関係を見ても、親が子に命令こそすれ、子どもを一個人として受け止める親がどれだけいるでしょうか。
家庭で、学校で、個人として認められない子どもは、社会性を身につけた責任ある大人に育ちにくいと思うのです。親から離れ、異文化の中で暮らすことを厭う若者が増えているのもそのせいかもしれません。日本の家庭教育、学校教育を変えなければ、21世紀の多文化社会を生き抜いていく個人を育成できないのではないでしょうか。国は個人の集合体であることを考えると由々しき問題です。
人と人との結びつきは、経済的、政治的、職業的意義以上に重要だと思います。
幼児を育てながらの彼女の奮闘に敬意を表すとともに、その示唆するメッセージが広く理解されることを願ってやみません。
原 不二子
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