INTERPRETATION
第25回 曖昧な日本語
最近読んだ本に、「新興国がモデルとするのはどういう国か?と考えたとき、経済力のパワーがあって、テクノロジーがあって、豊かで軍事には自制心があって、国内にも国外にもモラルがある国ということになると、答えは日本になる。……このモラルの中には『勤勉』、『助け合い』、『感謝』など、いろいろな精神が入ってくる。」と書かれていました。
辞書には、モラル(道徳)とは、 善悪の判断に基づく人の行為とあります。 今の政治、検察のあり方や国内外への対応にして、日本のどこにモラルがあると言えるのだろうと思わずにはいられません。
祖父の尾崎行雄は、1950年5月、サンフランシスコ講和条約締結の前夜に戦後の日本のあり方を審議する「日本問題審議会」に招かれ、91歳の高齢をおして渡米しました。そして彼は、日本とアメリカの関係は『親善』以上のもの ― 太平洋を挟んだ『モラル・アライアンス』であって欲しいと米国人に告げました。祖父は日米両国が、善悪の判断をきちんと行った上で行動することを願ったのだと思います。英語の”moral alliance” をカタカナで書くと『モラル・アライアンス』、日本語に訳すと『精神同盟』、『道徳同盟』となるのでしょうが、あまり釈然としません。祖父は生前よく「私たちが使っている言語はほとんど漢語で、文字を基として作られたものであるから、これでは逆立ちをして手で歩いているようなものだ」と言っていました。
日英の通訳者・翻訳者は日本語が 曖昧な故に苦労をします。そのような曖昧さが、現代の地球社会に生きる上で、コミュニケーションの大きな障害になっていることは深刻な問題だと思います。
原 不二子
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