INTERPRETATION

第24回 通訳の仕事はまさに危機管理

原不二子

Training Global Communicators

この程、オウム真理教の元幹部平田信の出頭に際し、警視庁を始め、警察の対応の不手際が問題になっています。警視庁は急いでマニュアルを作り、「対応の徹底を期す」としていますが、今の日本社会の問題のひとつは、考えることが疎かにされ、すべてがマニュアル化された対応になってしまっていることではないでしょうか。

通訳の現場では、常に臨機応変な現場対応の姿勢が問われます。日本では、人の書いた原稿を会議で読むことが主体となっていたため、これまではその原稿をなるべく早く入手し文面通りに準備をする習慣が定着していましたが、それも徐々に変わりつつあります。他人の発表を聞き、それに自分で考えて答える場面が増えているように思います。そうなると当然、文字を追うだけの通訳とは異なる準備が必要となります。英語を母国語としない人たちがそれぞれの考えを表現するとなると、言語のなまりに加え、文化や歴史等の事象による理解の齟齬など、多くの障害を乗り越えなければなりません。通訳にマニュアルはないのです。

原 不二子

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原不二子

上智大学外国語学部国際関係史研究科博士課程修了。 祖父は「憲政の父」と呼ばれた尾崎行雄、母は「難民を助ける会」会長の相馬雪香。母の薫陶により幼い頃からバイリンガルで育ち、21歳の時MRAスイス大会で同時通訳デビュー。G7サミット、アフガニスタン復興会議、世界水フォーラムなど数多くの国際会議を担当。AIIC(国際会議通訳者協会)認定通訳者で、スイスで開催される世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)、ILO総会の通訳を務め、最近では、名古屋における生物多様性(COP/MOP)会議、APEC女性リーダー会議、アジア太平洋諸国参謀総長会議、ユニバーサル・デザイン(IAUD)会議、野村生涯教育センター国際フォーラム等の通訳を務めている。

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