第19回 原子力に思うこと
先日、カリフォルニア州シミバレーにあるレーガンセンターで、2030年までに核兵器全廃を掲げる「グローバルゼロ委員会」会議の通訳を しました。米露間の第一次戦略兵器削減条約(STrategic Arms Reduction Treaty I、START I)は1991年に締結されましたが、START IIが事実上実行されなかった背景もあり、オバマ米大統領とメドべージェフ露大統領間で新STARTが 締結されるまで交渉は進展しませんでした。今年に入り、両国議会が同条約を批准はしたものの、米国のミサイル防衛システムが 問題として残っています。
先日の会合で、米国とロシア(当時のソ連)間の戦略核兵器削減交渉は、そもそもレーガン米大統領とゴルバチョフソ連大統領による1986年のレイキャビクサミットが皮切りだった事が紹介されました。25年前です。その前年の1985年には、レーガン大統領訪ソの1週間前に、米ソ間の緊張緩和の橋渡しをしたインターアクションカウンシル(世界各国の大統領、首相経験者をメンバーとする国際会議:OBサミット)がモスクワで開催され、私はその時の通訳を担当しました。 モスクワ空港は、アフガニスタンから引き上げるロシア人家族でごったがえしていましたが、 白樺の芽が吹き、随所にプリムローズが植えられ明るい印象を受けたことを想い出します。
原子力は、軍事用であれ民生用であれ、危険が伴います。テロリストが原爆を手に入れないまでも、原爆を取り扱うのが人間である以上、誤ってボタンを押すことは絶対ないという保障はありません。原子力で発電を行う民生利用は、万全の安全措置を施しても「想定外」の悲惨な事故が起こりえる事は、私たち自身が経験したばかりです。
核兵器にかかるコストは、人々のより良い生活を実現するために使用されるべき社会保障等の財源を奪うばかりではなく、人として道徳や倫理に反する問題であることを改めて認識した会議でした。
原 不二子
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