INTERPRETATION

Vol.5 佐藤三喜さん「研究開発から通訳の世界へ」

ハイキャリア編集部

多言語通訳者・翻訳者インタビュー

【プロフィール】
佐藤三喜さん Miki Sato
東京農工大学工学部大学院物質生物工学専攻終了後、1995年渡仏。1997年フランス政府給費留学生として、モンペリエ大学大学院薬学部薬品工業技術研究室にて化粧品学研修。帰国後、フランス系化粧品会社にて研究開発を担当。2001年より、フリーランスフランス語通訳翻訳者としての活動を始める。現在は通訳活動とともに、財団法人国際教育振興会、日米会話学院フランス語講師、スイスバランス化粧品の輸入代行を務める。

フランス語に興味を持ったきっかけは?
大学時代からお金を貯めてはあちこちに旅行し、20歳の時に初めてフランスに行きました。フランス語が全く分からず、非常に苦労したことを覚えています。ほとんど英語も通じなかったので、道を聞いても教えてもらえず、もう二度とくるまい! と心に誓ったほどでした(笑)。
その後、「大好きな山登りをしに、アルプスに行こう!」と思い立ってスイスに向かったところ、着いたところがスイス国境にあるフランスの街だったんです。あぁまたフランスに来てしまった……と嘆いても仕方がありません。観念して旅行会話集片手にがんばりました。不思議なことに、少しフランス語で話しかけるだけで、現地の人が優しくしてくださるんですよ。フランス語を話すと、途端に人が親切になるなんて面白いと思いませんか? 言葉の美しさに魅了され、勉強してみようかなと思ったんです。それからは、日本で昼間働いて夜はフランス語の学校に通う生活を始めました。

1995年にフランスへ?
フランス語を勉強しようと思った時から、留学のことは頭にありました。3年ぐらいお金を貯め、思い切って留学したんです。フランスでしか勉強できないことをやってみたかったので、語学学校に1年ほど通った後、大学の化粧品研究室に入りました。
香水に興味があったんです。初めてフランスに行ったときに、皆いろんな香水をつけていて、それまで香水なんでつけたことがなかった私は驚いたんですよ。香りには人の心を落ち着かせたり、逆にいらだたせたりする効果があることが分かって、そのメカニズムを研究してみたいと思いました。実際に私が入ったのは、化粧品製造全般の研究室だったので、香水ではなく、毎日のように日焼け止めクリーム、口紅、シャンプーを作りましたが(笑)。

帰国後、通訳を目指そうと思ったのは?
昔から通訳に興味はあったんですが、エージェントの方から通訳の大変さを聞いて、諦めてしまったんです。
帰国後、フランス系化粧品会社に入社しました。社内でフランス語を使う機会があるかもと淡い期待を抱いていたのですが、私の業務は研究開発なので、白衣を着て研究の毎日。それはそれで面白かったんですが、語学とは遠い世界でしたね。
ある時、フランスに送る薬事レポートの翻訳を頼まれたことがあったんです。どうやらこっちの方が向いているのでは? と思いました。実験よりも、言葉を扱う方が好きだということに気づいたので、会社を辞めることにしました。

その後、通訳の勉強を始められたんですか?
DELF、DALF(フランス文部省認定フランス語資格試験)はフランスで取ったんですが、当時の私の語学力は通訳レベルではなかったと思います。化粧品の専門知識はあっても、他の分野で語学力が追いつかなかったんですよ。会社を辞めた後、通訳学校に通い始めました。

「七つ道具」

初めてのお仕事は?
私にとってはすごく大きな仕事でした! 日本の薬品会社副社長とフランス自治体代表のミーティングだったんですが、本来であればお会いできないような方を目の前にして非常に緊張しました。結果的にはスムーズに進み、もっとやってみたい! と思いましたね。

特に印象に残ったお仕事は?
本当は技術系を専門にしたいところなのですが、フランス語は全体的な需要が少ないので、来たお仕事を受けていく形なんです。中でも印象に残ったのは、原子力関係の通訳です。フランスから技術者を迎え、日本の原子力発電所のメンテナンスについての話でした。フランスというと、文化的な面で取り上げられることが多いと思いますが、あらゆる面での専門性の高さに驚きました。

今だから話せるハプニングは?
フランス人は割とダイレクトに物を言うことが多いのですが、つい私もその影響を受けてしまいます(笑)。ミーティングで、フランス人が日本人担当者に「君たちは知識が全くない。もう一度学校に入って勉強してきなさい」と言ったんです。本来であれば、うまく言葉を選んで通訳しなければいけないところを、話の流れで私もつい一緒になって説教してしまいました……。会議後、「佐藤さんは、フランス寄りだ(笑)」と冗談で言われて、自分でもあれはほんとに失敗だったなと思っています。単に言葉を訳すだけではなく、二つの文化の橋渡しをしなければいけないのに、私が分断してしまってどうするんだと反省しました。

現在、スイスの化粧品輸入代行も行っていらっしゃるんですね。
どこの化粧品がいいかは、常に気になっていたんですが、「スイスバランス」がいいと聞き、去年の夏にスイスに向かったんですよ。その化粧品を扱っているサロンでエステをお願いしたところ、その効果たるや驚きでした。全て植物成分だけだというんです。正直なところ、化粧品なんてどれも同じだと思っていたんですが、これは理屈抜きで素晴らしい! の一言。直接スイスバランスの社長に交渉し、個人で輸入代行を始めました。商品カタログ、成分情報の翻訳も全て自分で行ったので、語学をやっていてよかったなぁと改めて思いました。

「愛用のスーツケース」

現在の1週間のスケジュールは?
最近はスイスバランスの仕事が詰まっていて、通訳のウェイトを少し減らしているんです。今週は、建築家の通訳、スイスバランス関係で雑誌社との打ち合わせ、週末は日米会話学院のフランス語講座2クラスを受け持っています。フランス人の大学院学生とペアで担当していますが、とても面白い内容になっているんですよ。

通訳学校の英語通訳コースでも学ばれていると伺いました。
そうなんです。これからは、日・仏・英の3ヶ国語で通訳ができればと思っています。幅が広がるのはもちろんですが、最近は出てくる資料が英語だったり、突然お客様が英語でお話になったりすることがあるので、英語は必須だと実感しています。今年の6月には英検1級を取る予定です!(笑)

今後もずっと通訳を?
はい、3ヶ国語通訳者を目指します。並行してスイスバランスの仕事も!

【編集後記】

佐藤さんのお肌のきれいさにびっくりしました。スイスバランス化粧品にご興味お持ちの方は、こちらをクリックしてください!
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テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

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