INTERPRETATION

Vol4. 小貫真貴子さん「人と人のつながりが大切」

ハイキャリア編集部

多言語通訳者・翻訳者インタビュー

【プロフィール】
小貫真貴子さん
Makiko Konuki
国立千葉大学教育学部卒業。ドイツ関係の企業に勤務後、ミュンヘン大学にてドイツ語、イタリア語を学ぶ。ミュンヘン市通訳ガイド資格を取得、通訳ガイドとして働く。日本企業現地駐在員として勤務後、日本帰国、ドイツ語通訳翻訳者としての活動を始める。現在、NHK放送通訳、会議通訳者として第一線で活躍中。

ドイツ語との出会いは?
大学時代、第二外国語にドイツ語を選んだんですが、授業では文法などを少し教わる程度だったんです。やり始めると突き詰めるタイプなので、授業だけに飽き足らず、1年生の頃から4年間、ドイツ語の学校でプライベートレッスンを受けました。父が英語・中国語の通訳者で、少なからず影響を受けているのかもしれませんね。

大学ご卒業後は、ドイツ関係の企業に?
とにかく普通に就職したくなかったので、片っ端からドイツ系の会社に電話をかけました。「新卒ですが、どこか就職口はありませんか?」と聞いたところで、ほとんどの会社は相手にしてくれませんでしたが(笑)。当時、外資系企業はキャリアを積んだ人たちがヘッドハンティングで入ってくるような場所だったので、大学卒の未経験の女の子が入るなんて考えられなかったんです。たまたま1社から「じゃあ面接に来たら?」とお返事を頂いて、あれよあれよという間にそこで働くようになりました。

その後、ドイツに向かわれたのですね。
会社でドイツ語を使う機会はありましたが、基本的に社内のドイツ人は日本語が話せるし、文書は全て英語だったんです。ドイツに行きたいなぁと思っていたところ、語学学校で、ドイツ三越現地社員募集の張り紙を見つけて応募しました。当時は海外に行く人もそれほど多くなく、親の反対もありましたが、三越というお墨付きがあれば大丈夫だろうと思ったんです(笑)。

何もわからずに現地に行きましたが、買い付け、商品開発、金額設定、ディスプレイなどを担当しました。各種見本市に出展するメーカーを訪ね、自分の判断で買い付けすることができたことも、自信につながりました。

その後、ドイツでの活動は?
三越を辞めた後、ミュンヘン大学でドイツ語とイタリア語を勉強しました。イタリア語は通訳も少しやったんですが、あるとき海外で生活している自分を客観視したときに、ふと不安感に襲われたんです。ステップアップしていかないと、このまま埋もれてしまうんじゃないかって。そこで、ミュンヘン市主催の通訳ガイドコースを受講しました。ドイツ人を対象にしたコースで、ドイツ文化・歴史・政治・美術など、かなりタフなコースでした。試験に合格したので、ガイドの仕事を始めたんです。2年ぐらいやるとまた次の目標が欲しくなってきて、知り合いが紹介してくれた会社に入りました。ある日本企業のドイツ代表という形で、非常に面白かったのですが、結婚を機に日本に戻ることを決めました。

帰国後、通訳者として活動を?
今から何ができるだろうと自問自答したときに、私にはドイツ語しかないと思ったんです。じゃあ通訳をやってみようかという思考です。これしか残っていなかったというか(笑)。エージェントに登録し、一生懸命営業しましたが、経験がなかったこともあり、最初の2年間依頼の電話は鳴りませんでした。ある時、ドイツ語学校のクラスメートから、NHK放送通訳の仕事を紹介されたんです。悩んだ結果引き受けたのですが、当時の私にとっては、すごくハードルが高かったです。こう見えても慎重派で、とてもじゃないけど私にはできないんじゃないかと不安になって。とにかく一度やってみようと、できる限り準備して本番に臨んだことを覚えています。その仕事をきっかけに、会議通訳のお仕事も頂くようになって、だんだんと通訳の仕事が増えていきました。とてもラッキーだったと思います。

小貫さんのプロとしての強みは?
私なんてまだまだですが、お金を頂く以上はスキルもパフォーマンスも言い訳はできません。強みではないかもしれませんが、頂いたお仕事には全力で向かうことを心がけています。振り返ってみれば、私自身すごくラッキーなキャリアを積んできたと思うんです。バラエティに飛んだというか、語学一筋でやってきた人たちや、帰国子女の方とは違いますが、いつもいろんな出会いがあって、勉強させて頂いたことを感謝しています。会社に入ったことで、ハードとしての組織のあり方、ソフトとしての人との付き合い方、上下関係などを勉強できました。今の仕事にも生きています。通訳も人対人なんですよね。スキルももちろん大事ですが、人と人のつながりも非常に大切だと思います。

1週間のスケジュールは?
平日は会議通訳、週末は放送通訳の仕事と、英語の通訳学校に通っています。その後は夕方から勉強会。落ち着きがないんですよ(笑)。空いた時間は、ゴルフや水泳、ジョギングなどして過ごします。もっと精神的な余裕も持って、演劇に行くようなゆとりが持てるといいなぁとは思うのですが。

もし通訳者になっていなかったら?
何かビジネスをやっていたかもしれませんが、商才があるかどうか分かりませんので(笑)。そういう意味では通訳が合っているのかなと思います。フリーランスなので、常に変化の毎日ですし。

ドイツ語通訳を目指している方へのアドバイスをお願いします。
もし、私から言えることがあるとすれば、どんな仕事でもいいからやってみて、経験を積むことです。日本語、ドイツ語のスキル、専門知識を身につけ、いつ依頼が来ても対応できるように準備しておくことが大事だと思います。

【編集後記】

本当に魅力的な方です。「私なんて実力ないから(笑)」と終始ご謙遜されていましたが、「実力」があるからこそ、クライアントからのリクエストが絶えないのだと思います。ドイツ語通訳を目指す方、是非小貫さんのお話をご参考に!

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ハイキャリア編集部

テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

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