INTERPRETATION

第87回 慣用表現の語順 white and black?!

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。イギリスでは先週末から夏時間(British Summer Time/BST)が始まりました。お天気もよく、いよいよ観光シーズンの到来です。

ご存知の通り、ブリュッセル空港で起きたテロ攻撃からちょうど1年後の3月22日、ロンドンの中心地でテロ攻撃がありました。私は、ロンドン郊外に住んでいますが、この日はロンドンメトロポリタン大学で授業をしており、その最中にこの事件が起きました。事件現場、ウェストミンスター地域からは少し離れているので、夫から心配のメッセージが届いた以外は、平常通りの仕事を終え、問題なく帰宅をすることもできました。けれども、現場の周辺には国会議事堂以外にも官公庁が多くあり、通訳の仕事でときどき訪れる地域です。身近でこのような事件が起きたことは大ショックです。ただ、だからと言って落ち込むだけではなく「じゃあ、どうするのか?」を考えたとき、答えは英メイ首相の事件後の声明にあると思いました。

Tomorrow morning, Parliament will meet as normal. We will come together as normal. And Londoners and others from around the world that have come from around the world to visit this great city will get up and go about their day as usual.

(明日の朝、議会は平常通り開催されます。我々は、いつも通りに集まります。そして、ロンドン市民も、世界中からこの素晴らしい街を訪れている人たちも、いつも通りに起きて、いつも通りの日を過ごします。)

それがnever give in to terror(決してテロには屈しない)ということだ、と。

というわけで、今年イギリス訪問を予定されていた方々は、観光旅行であったとしても、出張だったとしても、当初の予定通りお越しになることを願います。それが、私たち一般市民にできることです。

前置きが長くなりましたが、少し気持ちを明るくするために、light-heartedなトピックを紹介します。

20年も前、まだ日本に住んでいたころの話ですが、英語ネイティブとの会話で私が「白黒テレビ」のことを「white and black TV」と言ったところ、「We never say “white and black”TV, always say “black and white”TV」と返され、目から鱗が落ちる思いをした経験があります(90年代のアメリカではまだ白黒テレビがありました)。日本語でも「ライスカレー? それともカレーライス?」のような議論を聞いたことがありますが、慣習的に順番が決まっている表現というのが意外にあるものです。そこで、今回はそんな気軽な話題を取り上げます。

ビジネス分野における日本語と英語で逆の表現には、次のようなものがあります。

・需要と供給→ supply and demand

・1Q(第1四半期のこと「イチキュー」と発音)→Q1(英語では「キューワン」)

・貧富→rich and poor

・新旧の→ old and new

・紳士淑女→ladies and gentlemen

・老若→young and old

・売買→buying and selling

・飲食→food and drink/eat and drink

・前後に→back and forth

・行ったり来たり→come and go

などがあります。

一般的な表現としても

・あちこち→here and there

・あれこれ→this and that

・父母→mum and dad

など、考えてみれば日本語でも「こちあち」とか「母父」とは言わないように英語でも順番が決まっています。

けれども、すべてが逆なのではなく

・夫婦→husband and wife

・少年少女→boys and girls

・男女→men and women

・紅白→red and white

・上下→up and down/top and bottom

・増減→increase and decrease

・生死→life and death

など、同じ語順のものもあります。

ちなみに「ライスカレー/カレーライス」に関しては、英語の語順ではcurry riceであり、rice curryとはふつう言いません。ただし、curry and riceとandが入ることもよくありますし、最近は日本流のカレーがKare raisuやraisukareeとしてレストランのメニューに出ていたり、オンラインでもレシピが紹介されています。takoyakiやtonkatsu sauceに加えて、karee raisuが英英辞典に載る日も遠くないかもしれません(第83回参照)。

以上、長くなりましたが、日英の語順が違う/同じ表現について楽しんでいただければ幸いです。

2017年3月27日

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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