INTERPRETATION

第85回 フランス革命が起きるのか? フランス大統領選近づく

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。ご存知かと思いますが、フランスの大統領選挙日がいよいよ来月となりました。昨年は、イギリスのEU離脱選択とアメリカ大統領選でのトランプ氏の勝利が世界をあっと驚かせましたが、フランスはどうなるのでしょう? では、先週の英エコノミスト誌でも特集として取り上げられていたフランス大統領選を紹介します。

仏大統領選は4~5月に行われます。4月23日の第1回投票 (the initial round)で過半数を獲得する候補者がいなければ、5月7日の決選投票 (run-off election) にて上位二人が争います。ふつう現大統領は第2期目の続投を目指して立候補するものですが、オランド大統領は “史上最も人気のない大統領(the least popular president in history)”と言われており、ご本人も勝ち目がないことに気が付いて予備選 (primaries) にすら出馬しませんでした。ちなみにニコラ・サルコジ前仏大統領は2012年の大統領選に出馬しましたが、決選投票で現オランド大統領に僅差で負けました。

予備選による各党の候補者選びは既に終了しており、現在も残っている候補者は5人です。その中でも最も話題になっているのが、マリーヌ・ルペン (Marine Le Pen) 国民戦線 (the National Front, FN)党首。極右政党 (far-right party) のFNは「フランス第一 (France first)」や「反移民 (anti-immigration)」、「反EU (anti-EU)」を掲げていて、支持者の数を増やしています。

最近まで最も有力視されていたのは、中道右派 (centre-right) 共和党(the Republicans)のフランソワ・フィヨン (Francois Fillon) 氏。前サルコジ政権では首相職に就いていたほどのベテラン政治家。いくらルペン氏の人気が高まって第1回投票で残っても、きっとフィヨン氏が最終的には勝つだろう、というのが大方の予測でした。それが年明けになり、フィヨン氏が妻や子に給与を不正に支払っていたというスキャンダルが浮上。3月に入り、正式に司法調査 (formal judicial investigation) が入ることが決まりましたが、共和党はフィヨン氏の支持を維持することを表明しています(今さら新しい候補者を立てても勝ち目がないから?!)。けれども世論調査 (poll/polling) では、支持率が急降下しています。

それに対して人気が高まっているのが、若手・改革派のエマニュエル・マクロン氏。社会党 (the Socialist) オランド政権で経済・産業・デジタル大臣 (Minister of Economy, Industry and Digital Affaires) を務めていましたが、昨年同職を辞任し、独立候補として出馬しています。中道派(centrist)のマクロン氏は、先週初めて世論調査でルペン氏を追い越してトップに立ったことが話題となりました(39歳という若さですが、奥さんは高校生だったころに教わった20歳以上も上の教師という点も気になります)。

現社会党政権からの候補者は、ブノワ・アモン(Benoît Hamon)前教育相。「フランスのバーニー・サンダース」とも呼ばれているアモン氏は、「最低所得保障(ベーシックインカム)」を公約しています(本コラム第49回参照)。

そしてもう一人、極左 (far-left) ジャン=リュック・メランション (Jean-Luc Melenchon) 氏がいます。反EUで、緊縮財政にも反対しています。

フランスは、1958年に第五共和政 (the Fifth Republic) 成立以来、左派と右派の両ブロックに分かれた二大政党が交代しながら政権を握ってきましたが、最近の世論調査で上位2位に入っているのは、どちらも新興勢力。「フランス革命」が起きるのか、今後の動きに注目です。

2017年3月13日

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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