第142回 Brexit Update: Chequers planとは?
皆さん、こんにちは。本コラムをお休みしていた1カ月の間にBrexit関連でかなりの動きがありましたのでお伝えします。
イギリスのEU離脱が国民投票で決定してから早くも2年が過ぎました。けれどもこれまでEUを離脱した前例がないということもあり、「EU離脱」そのものが何を指すのかが不透明なまま月日が流れています。これまで何度か取り上げている通り、EU離脱派が約束した内容(モノやカネの動きは自由なままでヒトの動きの自由は制限する。EUの規制には従わない)は、EUに受け入れられないため交渉が滞った状態が続いています。政府内でも強硬派と穏健派に意見が分かれていることや、第138回で取り上げたアイルランドの国境問題により解決がより複雑化しています。
そこで、今月上旬(7月6日)に英メイ首相は閣議を開き政府案を一つにまとめました。これまでよりも穏健な内容で閣僚の合意を得た後、メイ首相は同案を政府が一枚岩となって支持するよう呼びかけ、公に批判する大臣は辞職するよう示唆したとのこと(参考記事)。
早速、週明けにはデービッド・デービスEU離脱担当相に続いて、ボリス・ジョンソン外相が辞任しました。二人とも単一市場、関税同盟、欧州司法裁判所の管轄権からの完全離脱(Clean Brexit)を唱える強硬派。大物閣僚の辞任が大きなニュースとなりました。
本件で出てくるキーワードをいくつか紹介します。
1.Chequers plan(チェッカーズ案): Chequersというのは首相の別邸のこと。ここで開催された閣議で合意された案なのでこのように呼ばれています。EU離脱後も「モノ」に関しては単一市場に残り、EUの規制に従う方針。
2.polish a turd(クソを磨く): 某大統領のスピーチで出てきそうな表現ですが、発言者は辞任した前ジョンソン外相。同大統領はジョンソン氏のことを「I think he would be a great Prime Minister. I think he’s got what it takes(首相になるべく資質を備えている)」と称賛しただけあって語感も合うのでしょう。このイディオムは「turd(糞、クソ)のようなものはどんなに磨いてもよくならない。時間の無駄だ」という意味です。ジョンソン氏は、チェッカーズ案を支持することはpolishing a turdのようなものだという捨て台詞を吐いて辞任しました。
3.no deal(合意なし):Brexitの話題でno dealと出てきたら「交渉が妥結することなくEUを離脱すること」を意味します。昨年1月のスピーチ(第78回参照)でメイ首相が “No deal is better than a bad deal(EUに屈するような悪条件を呑むくらいなら合意できないまま強行的に離脱するほうがまし)” と発言したために「合意内容によっては本当にdealがないまま離脱したほうがいいのか」「No dealで離脱なんて本当にありえるのか」などがよく議論されます。
先週は、ラーブ新EU離脱担当相が就任後初めてブリュッセルに出向き、EUとの交渉を引き継ぎました。正式離脱は来年3月ですが、交渉の実質期限は10月と言われています。これからの数カ月で急に話がまとまるのかどうかに注目です。
以上、Brexit Updateをお伝えしました。
日本も欧州も暑い日々が続いていますが、皆さまどうぞ体調を崩されないようお気を付けください。
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