第139回 イタリア新政権誕生
本コラムが掲載される頃には世界中で米朝首脳会談のニュースが流れていることでしょう。二転三転した後に開催されるトランプ大統領と金正恩委員長の会談。いったいどうなるのか楽しみですね。
先週末は、カナダでG7首脳会談開催。アメリカが貿易問題や環境、中東問題などで他の6カ国と意見が合わないのでG6+1などとも言われるようになりましたが、今週はそのG7に就任直後に出席したイタリアの首相と新政権を取り上げます。
イタリアで総選挙が行われたのは、なんと3月4日。3カ月も前のことです。選挙の結果、これまで政権を握ってきた政党が敗退し、二つのポピュリスト(大衆併合主義)政党が大きく議席数を延ばしたものの、過半数を獲得した政党がなかったため政権誕生までずいぶん時間がかかりました。
今回勝利した二つの政党はこちら。
・Five Star Movement
(五つ星運動 / 伊では Movimento 5 StelleなのでM5Sと略される)
今回の選挙で32%を得票し、第1党となった左派政党。人気コメディアンのベッペ・グリッロが2009年に設立。イタリア南部の貧困層から支持を得ている。
・The League(同盟)
今回の選挙で18%を得票した右派政党。イタリア北部の富裕層からの支持を得ている。移民排斥を訴えている。
誰が首相になるかでもめた末、これまで政治に縁がなかった法学者(a non-political lawyer)ジュゼッペ・コンテ(Giuseppe Conte)氏が最終的に指名される。就任して数日後にG7首脳会議にて外交デビュー。
「右派と左派の連立政権(coalition government)なんて、政策が違いすぎるのでは?」と思うかもしれませんが、どちらも減税(tax cut)と社会福祉の充実(benefit increases)を約束していて、EU懐疑派(Eurosceptic)。ユーロ圏からの離脱を訴える強硬派のサボーナ氏を経済相に選んだため、マッタレッラ大統領から却下されて大騒動になりましたが、最終的には他の人が経済相に選ばれ一件落着。
イギリスのEU離脱、アメリカのトランプ大統領選出のあと、フランスでマクロン大統領が選出されたことでポピュリストの動きが一時期収まったかのように思えましたが、EUで4番目の経済規模を誇るイタリアでこのような政権が誕生したことは先進国社会の大きな流れは続いていると言えるでしょう。
その背景には、イタリアの地理的な事情もあります。地中海に面し、中東や北アフリカに近いため、大勢の移民・難民が過去5年でイタリア沿岸に押し寄せています。それに対してEUからの援助が少なかったことにイタリア人は怒っています。その怒りを受け、新政権は早速移民対策を発表しています。
欧州から遠くに住んでいる人にとってはイギリスのEU離脱(Brexit)とイタリアのEU離脱(Italexit)だったら、Brexitのほうが深刻だと思うかもしれません。けれども、イタリアは先週取り上げたアイルランドと同様にユーロ圏(Euro Zone)に入っているため、Italexitの場合、ユーロという通貨の崩壊につながりかねない深刻さが伴います。また経済規模ではギリシャの10倍なのでGrexitとも比較になりません。Too big to bail out(救済するには大きすぎる)とも言われています。
ということで、Brexit以外のヨーロッパ諸国の動きにも今後要注意です。
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