第131回 Brexit jargon(英国EU離脱関連用語)
先週末は、キリスト教系の国ではEaster weekendで4連休でしたが、日本は新しい年度の始まり。児童や学生は入学・進学、社会人も転勤や異動で新しい生活が始まる人が多い時期ですね。皆さんにとって新しい年度がそれぞれスムーズに始まっていることを願っています。
イギリス発信のメディアを追っている方は、この1週間「Brexit関連ニュース」が多かったことにお気づきでしょう。なぜ特に先週はBrexitの報道が増えたかというとイギリスが欧州連合(EU)から正式離脱するまでちょうど1年となったからです。1年前の3月29日にEU離脱の正式プロセスが開始(本コラム第88回参照)しましたが、EU基本条約第50条発動から2年後に離脱することになっているので、残り1年というわけです。
日本からイギリスへお越しの方と話すと、まだ混乱があると感じます。「もう離脱した」と思っている方や、「これからまた国民投票があって結局は離脱しない」と思っている方にときどき出会います。
実際には、正式離脱まではあと1年と決まっています。二度目の国民投票を求める声もありますが、今更後戻りすることはありません。ただし、2020年12月までは移行期間(Transition/implementation phase)と設定されており、それまでは基本的に今の状態が続きます。移行期間中に自由貿易協定を含め、様々な詳細が決定し、2021年から新しい体制が始まることになります。
Brexit関連の用語(Brexit jargon)については、本コラムでこれまで何度も取り上げてきましたが、こちらの一覧(http://www.bbc.co.uk/news/uk-43470987)を見るとまだまだたくさんあることに気が付きました。その中でも今日は、cliff edgeとEuroscepticismを解説します。
・cliff edge
直訳は「断崖絶壁」「崖っぷち」ですが、「EUと何の取り決めもないまま離脱の日を迎えると崖っぷちから転げ落ちるかのように大混乱が生じる」と懸念されており、この言葉がよく使われます。EU離脱が決まってすぐ後に英メイ首相が「No deal is better than bad deal」という発言をしたことが影響していると思います。とりあえず移行期間が合意されたことで1年後にcliff-edgeが起きることは避けられたと考えられています。
・Euroscepticism
一般的には「欧州懐疑主義」と訳されていますが、私見では「欧州統合懐疑主義」とか「EU懐疑主義」と訳すべきだと思います。なぜなら、Euroscepticismというのは「ヨーロッパ」に対する不信感ではなく「欧州統合」「欧州連合」に対する反感/懐疑心/不信感を指しているからです。Euroscepticとはヨーロッパという文化や歴史を否定する人ではなく、各国が主権を失いどんどん統合の方向に向かっているEUに対して反対している人たちを指します。Brexiteersと呼ばれる人たちは当然Euroscepticですが、ボリス・ジョンソン外相は何度も「We are leaving the EU but we are not leaving Europe」と言っています。「欧州」と「欧州連合」はしっかり分けて考える必要があります。
以上、お久しぶりにBrexit関連を取り上げました。お役に立てば幸いです。
年度替わりと言えば、個人的には日本にいる双子の姪がそれぞれ大学に入学するため引っ越しをした週末でした。赤ちゃんのときからずっと成長を見てきた姪っ子が巣立つというのは感慨深いものです。早くいいお友達ができますように!
2018年4月2日
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