INTERPRETATION

第118回 Scrooge/Grinchとは?

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。ロンドン周辺地域では日曜日の朝、目覚めると一面が銀世界でした。寒いけれども、雪景色って素敵ですね。

さて、12月も早中旬。クリスマスが近づいてきました。日照時間が短く、気が滅入りがちなこの季節は、クリスマスのことを考えて気分を盛り上げようとする人がたくさんいるようです。

皆さんは、Scrooge(スクルージ)って聞いたことがありますか?

辞書の訳では「ケチな人/守銭奴」などと出ていますが、この時期によく使われるのはなぜでしょう?

それは、Scroogeが単に「ケチ」という意味なのではなくて、英国の文豪チャールズ・ディケンズ著『クリスマス・キャロル(原題:A Christmas Carol)』の主人公エベンーザ・スクルージから来た言葉だからです。原書は1843年に出版されましたが、その後もずっとクリスマスの時期には語り継がれ、何度も映画化や舞台化され、日本語版もいくつかのバージョンが出ているようです。

キリスト教文化の国々では、ご存知の通りクリスマスは年に一番大切なお祝いの日。愛する人へのプレゼントやごちそうのために、1年間お金を貯める習慣でした(今でも、一部の人はそうだと思います)。その一方、家族がいなくて、冷血なScroogeはクリスマスが大嫌い。事業の経営者ですが、強欲で金儲け主義。大家族を養っている、たった一人の従業員にも薄給しか出していません。それで現代でもScroogeが「ケチ」の代名詞として使われているのです。

とても有名な話なのでご存知でない方はぜひ一度映画をご覧になるか、本をお読みになるといいと思います。そうすれば、Scroogeという言葉が普通名詞として使われているときにニュアンスまで理解できることでしょう。

よく似たキャラクターとして、アメリカではGrinchがいます。こちらは児童向けに1957年にDr Seussが描いた絵本の主人公で、やはりクリスマスが嫌い。2000年制作のHow the Grinch Stole Christmasという映画など、この時期に子供と一緒に(あるいは子供になった気分で)楽しむのもお勧めです。

というわけで、この時期にクリスマスについてぶつぶつ文句を言っていると

“You are being a Scrooge/Grinch.(スクルージ爺さん/グリンチみたいだね)”と言われるかもしれません。

何度か言われたことがある経験者による執筆でした (苦笑)。

2017年12月11日

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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