INTERPRETATION

第105回 Figures of speech その4 ants in your pants

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。早くも8月下旬、お盆も終わり平常の生活に戻られたころでしょうか。

さて、今回は英エコノミスト誌2017年8月17日号で見かけたFigures of speechを紹介します。(Figures of speechについては第98回参照

今回紹介する記事の大見出しはChina’s digital-payments giant keeps bank chiefs up at nightですが、小見出しにはAnts in your pantsと書かれ、挿絵には大きな赤いアリと小さなダークスーツの銀行マンが中国の硬貨を押し合いしている姿が描かれています。これだけの情報から、この記事の内容をどれくらい想像できるでしょうか?

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この場合、「have ants in the/one’s pants:(不安・心配・緊張などで)そわそわして落ち着かない」という慣用表現を知っていることが決め手となります。pantsは米国では「ズボン」ですが、英国では「下着のパンツ」。どっちにしてもpantsにアリがいたら落ち着かないですよね。この表現にピンと来ると、大見出しの「主語 keep 人 up: “主語” のせいで “人”が眠れない」とも関連していることが分かることでしょう。

同記事では中国のフィンテック大手の目覚ましい成長ぶりが取り上げられていますが、この記事の主人公はAnt (Financial)という名前の中国の企業なのです。そこでhave ants in your pantsという慣用句とかけて小見出しが出ているというわけですね。翻訳者泣かせな表現です。

フィンテックについては第97回で取り上げましたが、モバイル決済などの技術をどんどん普及させているAnt社は今後どんどんグローバル化を進めていくようです。このような動きに従来型の金融機関はどう対応していくのでしょうか。アリと銀行マンの戦いでは、どちらが勝つのでしょう? 今後も注目のトピックです。

2017年8月21日

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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