INTERPRETATION

第89回 テスラ、株式の時価総額でフォードを超える

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。満開の桜のもとでお花見は楽しまれましたか。近年はこの時期になると、フェースブックやツイッターの写真でも桜を楽しめますが少しホームシックにもなります。イギリスでも桜は咲いていますが、「桜並木」というのはなくて、あちこちに1本ずつ咲いている感じです。

春が本格化したことに喜びを感じる一方、世界ニュースに目を向けると、シリアでの化学兵器疑惑を受けて米国がシリアにミサイル攻撃実施、スウェーデン首都ストックホルムでテロ攻撃と衝撃的なニュースが続き、習近平国家主席とトランプ大統領の会談に関する報道が押しのけられた感じです。

そんな中、私が注目した先週のビジネスニュースは以下です。

Tesla’s share price soared after it published bumper first-quarter sales figures for its electric cars. The company’s market capitalisation overtook that of 114-year-old Ford for the first time. Last year Tesla delivered 76,000 cars and Ford sold 6.7m vehicles, but it is Tesla that is racing ahead of Detroit in developing the cars of the future.

(英The Economist誌 2017年4月8日号より抜粋)

これまでに取り上げた用語がいくつか出ていますが、復習も兼ねて解説します。

・soar: 急増する、急騰する(「増加」の類語は第40回を参照) 

 ここでは「テスラの株価が急上昇した」

・bumper: ロングマン英英辞典では unusually largeと定義されています。「大漁」だとbumper catch、「(穀物の)豊作」だとbumper cropと言えますが、ここでは「電気自動車(EV)の販売台数が前年同期比を大きく上回った」ことを指しています。

・first-quarter: 第1四半期(会計年度の始まりは企業によって異なるの注意)

・market capitalisation (market cap, market capitalizationとも):時価総額。「株価x発行済み株式数」で計算されます。

・overtook (overtakeの過去形):~を追い越す、上回る

・race ahead of – : ~の先を行く

・Detroit:米国の三大自動車メーカーの代名詞

 動詞にraceを使うことで、洗練されたテスラのスポーツカーが大手メーカーの先をどんどん走っている姿が思い浮かびますね。

 創業10年あまりのテスラ社が自動車業界の老舗フォード社の時価総額を上回ったことが注目されました。販売台数では、テスラ社7万6000台、フォード社670万台とまだまだ比較の対象ではないようですが、世界中の自動車メーカーが苦戦している中で、いち早く電気自動車に投資をして開発を進めてきたことが着実に実を結びつつあることを示すニュースです。大量生産(mass production)に向けた目標値は2018年に50万台、2020年に100万台、ということなので達成のためにはまだ相当な努力が必要だと思いますが、大きな目標に向かっての前進ぶりは目覚ましく、今後も注目したいと思います。

 創業者のElon Musk氏。数々の偉業を成し遂げている天才とは思えない、はにかみ屋で謙虚な方。「地球環境を守るために持続可能エネルギーを実現」「人類の新しい環境を求めて宇宙への旅立ち」という二つの大きな夢に向かってひたむきに努力をしている姿に胸を打たれます。ぜひTed Talkをご覧ください。

2017年4月10日

Written by

記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
Follow me on Twitter (@HiromiGreen) and note (https://note.com/hiromigreen)

END