第86回 G20声明から分かる、国際社会の流れ
皆さん、こんにちは。3月も下旬に入り、日本は年度末で慌ただしい時期でしょうか。こちらイギリスでは、イースター休暇(4月中旬)そしてその後の受験シーズン(5月~6月)が近づいていることを実感する時期です。
先週は、ドイツでG20財務相・中央銀行総裁会議 (G20 Finance Ministers and Central Bank Governors Meeting) が開催されました。今回は、G20の共同声明(the communique)から明らかとなった国際社会の動きについて取り上げます。
・保護主義について
「反保護主義(anti-protectionism)」は、本コラム第67回~第69回で取り上げたグローバル化(globalisation)と関連しています。保護主義(protectionism)とは、自国の産業の保護や国際収支の改善などを理由に関税や輸入制限などの政策を取ることですが、G20はこのような政策に反対し、これまでの共同声明には、「resist all forms of protectionism(あらゆる形態の保護主義に対抗する)」という文言が含まれていました。それが今回の会合では、米ムニューシン財務長官が「米国は現行体制の下で悪条件を押し付けられた」という論理を展開し、共同声明からanti-protectionismに関する文言が削除されました。これには、トランプ大統領が選挙活動中から訴えていた主張が反映されています。
・温暖化対策
G20は、これまでの声明では国際的な枠組み「パリ協定(the Paris Agreement)」への支持を打ち出してきましたが、トランプ大統領は同協定から脱退する意向を示しており、今回の声明では気候変動(climate change)に関する項目も削除されました。
トランプ氏が大統領になり、選挙公約をどこまで実行するのかが今年の最大の注目点(第76回参照)でしたが、大方の予想以上に(?!)事をどんどんと進めているようで、国際社会も大きく影響を受けています。
この後、5月にはイタリアのシチリア島にてG7サミットが、7月にはドイツ・ハンブルグにてG20サミットが開催されます。これらの会合にフランスからは誰が参加するのか(第85回参照)、そして国際貿易や環境政策はどういう方向に動いていくのかに注目したいと思っています。
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