第67回 「グローバル化」 とは?
皆さん、こんにちは。米国大統領選もいよいよ大詰めを迎えていますが、既に実施された英国のEU離脱国民投票、来年予定されているフランス大統領選・ドイツ総選挙など、世界の主要国で国民の意思を反映するチャンスが次々と訪れています。そこでよく話題になるのが、グローバル化(globalisation)です。よく聞く言葉なので、なんとなく理解しているように感じているかもしれませんが、グローバル化が何を意味し、どんな恩恵がある一方で、どんな弊害があるためにトランプ氏をはじめ反対意見が台頭しているのかについて2回に分けて考えてみましょう。
そもそも「グローバル化」とは何を意味するのかですが、どの文献を見るのかによって定義も様々です。ここではイギリスの経済学初級の教科書(高校レベル)から引用します。
まずはこのように定義されています。
Globalisation is about the world becoming more like a Single Economy.
つまり、大きな流れとしてはEUのように経済が統合化するということです。
具体的には次のような説明があります。
・The free movement of capital and labour across international boundaries.
・Free trade in goods and services between different countries.
・The availability of technology and intellectual capital (e.g. the knowledge of employees) to be used (and patented) on an international scale.
資本や労働力の自由な移動、モノやサービスの自由貿易、技術や知的資本が国境を越えて利用されることなどということですね。
ただし、globalisationとは経済面だけに限りません。
Globalisation also involves political and cultural factors:
For example, international bodies such as United Nations (UN) tend to lead to a convergence of political decisions – i.e. there are more joint decisions made between countries, and more international cooperation.
Examples of cultural globalisation include the spread of things such as McDonald’s and yoga across the world.
国連などの国際機関を通じて国家間で政治的な意思決定がなされ国際協力が高まることや、ヨガやマクドナルドなどの文化が世界に広がることもglobalisationの一環と言えるようです。
では、過去30年間でグローバル化が劇的に進みましたが、その要因は何でしょうか?
この教科書には10項目挙げられていますが、本コラムでは上位3項目だけを引用します。
1. Trade liberalisation – this is the reduction or removal of tariffs and other restrictions on international trade (i.e. reducing protectionism). Countries might negotiate these trade agreements using the World Trade Organisation (WTO)
2. A reduction in the real cost and time needed for the transportation of goods means that it’s cheaper to export and import. For example, due to the development of lager cargo ships.
3. Improvements in communications technology – for example, the internet is making the communication needed for international trade easier and cheaper.
1のtrade liberalisation(貿易自由化)は、米大統領選でもホットトピックですね。ヨーロッパでは、先週EUとカナダの自由貿易協定があと一歩で締結という段階になって承認見送りになり大きなニュースとなっています。protectionism(保護主義)、the reduction or removal of tariffs(関税の削減・撤廃)などキーワードとして覚えておくと良いでしょう。
2の輸送手段の発達、3の通信技術の進化もグローバル化の要因ということで、言われてみれば全くその通りという感じですね。
4位以下には多国籍企業の利益追求、海外投資の増加などが挙げられています。
というわけで、グローバル化を一言で言うと「国境を越えてヒト・モノ・カネの動きが活発になること」でしょうか。
一般的にはこれまで “グローバル化=ポジティブなイメージ”だったと思いますが、それに異論を唱えるトランプ氏がなぜこれほどまでに支持を受けているのか、グローバル化の恩恵と弊害については次回考察したいと思います。
通信手段の発達と言えば、ウン十年前にアメリカ留学していたころは日本の家族や友人への連絡はエアメール(届くのに約1週間)、公衆電話から国際電話をかけるには1回何千円もかかっていました。それが今はスマホを使って無料でビデオチャットできるようになってホント夢のようです。先月からグリンズアカデミーというオンラインの通訳コースを開講していますが、世界中から受講生が集まり感激しています。本コラムのおかげもあって、向上心の高い方々が集まり、共に学び、互いに刺激をしあっています。こんな風にグローバル化の恩恵に毎日感謝している私にとっては、グローバル化の弊害について考えるのも興味深いことです。
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