INTERPRETATION

第61回 保険用語 第1弾

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。執筆時の今は、9月11日イギリス時間の午後で、ちょうど米国では9・11の追悼式典が行われています。あの衝撃的なニュースが世界に流れてから15年が経ったのですね。テロの脅威がなかなか収まらないのは残念ですが、少なくともシリアの内戦に関しては停戦が合意されたことは喜ばしいニュースです。

今回から数回に分けて保険業界で使われる用語を取り上げます。日常的に見聞きする言葉でも意外に定義や訳語があやふやかもしれません。

今回は1回目ということで、基本的な概念を理解した上で用語を見ていきましょう。

まず「保険(insurance)」とは、大勢の人があらかじめ「保険料」を出し合い、保険事故が発生した時には「保険金」が給付される制度。保険関係の設定のために「保険契約」締結され、保険料の支払い義務を負う者を「保険契約者」、保険事故が発生した場合に保険金を支払う側を「保険者」といいます。

1.保険料/掛け金: premium

「~料金」という表現は何の料金かによって英語ではcharge, rate, fare, fee, toll, billなど色々あって、正しい語を使うのは意外に難しいのですが、保険料の場合はpremiumといいます。英語premiumというとたくさん語義があり、特に「プレミアム/割増金」の意味が最初に思い浮かぶかもしれませんが、premiumに「保険料」の意味があることもこの機会にぜひ覚えてください。発音は「プレミアム」ではなくて「プリーミァム」。

2.保険金:insurance, insurance money/payment

保険事故が発生したときに保険会社が支払うお金のこと。保険の文脈だと分かっていれば、単にpaymentやmoneyだけでも十分です。

「保険金を請求する」というときの動詞は何でしょうか? 

答えはclaimです。claim for damageで「損害の賠償請求をする」。

ところで日本語で「クレーム」というと「苦情(complaint)」のことなので、カナカナに紛らわされてclaimと訳さないように気を付けましょう。

3.保険契約:insurance policy

「契約」というとまずcontractが思い浮かびますが、保険契約の場合はふつうpolicyを使います。”policy=政策”と覚えている人も多いかもしれませんが、「保険契約」の意味も覚えておくとよいでしょう。

4.保険契約者/被保険者: policyholder, insured (person)

保険料の支払い義務を背負うのが保険契約者(policyholder)、保険をかけられている人や組織を被保険者(insured)といいます。policyholderとinsuredは同じ人の場合もあれば、夫が妻や子供の保険もかけている場合など、insuredが複数の場合もありますし、企業が従業員の保険をかけていればpolicyholderとinsuredは別の名義になります。

5.保険者:insurer

保険料を集めて、請求に応じて支払う側を保険者(insurer)と言います。たいていは保険会社(insurance company)ですが、個人の場合もあれば、リスクが大きい場合は複数の保険会社が共同で保険を引き受ける場合もあります。

以上、今回は保険関係の用語を取り上げました。

先日、愛しい教え子から「ついにIR通訳デビュー。授業で習ったことがとても役に立ちました!」という嬉しい報告を受け、自分の仕事にやりがいを感じました。

今回の表現も読者の皆さんにとって、いつか役に立つ日がくればいいなと思っています。

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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