第60回 Apple and Tax
皆さん、こんにちは。9月に入り、イギリスでは新学年、日本では2学期がスタート。それぞれの夏の思い出を胸に新たな生活が始まる時期ですね。皆さんにとって、学びの多い秋となることを願います。
さて今回は、先週話題を呼んだビジネスニュース、米アップル社にEUが最大1.5兆円(130億ユーロ)の追徴税をアイルランド政府に納付するよう命じた件を取り上げます。
「アメリカの企業であるアップル社が、アイルランドに納税するようEUが命じる」というニュースの意味合いを理解するにはグローバル企業が税負担を減らすために何をしているか、そしてその節税対策のため多くの先進国にどのような影響が及んでいるかを理解する必要があります。
そこで鍵となる表現を紹介します。
・tax evasion: 脱税
これは、偽りの報告などをして税金の支払いを意図的に怠るという違法行為です。見つかると罰金や禁固刑という罰則が与えられるため、多くの大企業は違法行為をしないように努力をします。
「脱税する」と動詞で表現するときはevade tax。
・tax avoidance:節税、租税回避、税金逃れ
tax evasionと違い、こちらは法律に違反しない範囲で納税額を下げようとする行為です。国によって納税義務のルールが大きく異なるため、グローバル企業の多くは、税務コンサルタントを雇い、どの国でどのように税金を払えば節税できるかを綿密に計算し対策を立てます。その結果、実際に経済活動を行っている国とは別の国で税申告をすることでかなりの節税を実現しています。アイルランドやオランダのような国は、外国の大手企業を誘致するために税率を低く設定し、さらに特定の企業に優遇措置をとり、より低い税率を認めています。アップルだけでなく、スターバックス、アマゾン、グーグル、マクドナルドのような皆さんが毎日の生活で利用しているような大手企業が大規模なtax avoidanceをしていることがここ数年問題視されてきました。
こちらも動詞表現はavoid tax。
・legally right but morally wrong: 合法行為ではあるが、道徳的に間違っている
このトピックでほぼ必ず出てくるのが、この表現です。他の企業は法人税を何十パーセントも払っているのに、上記のような一般消費者を相手に巨額の利益を出している超大手企業がほとんど法人税を払っていないというのは、法には触れていなくとも倫理的にやってはいけないことだ、という議論です。
・the Base Erosion and Profit Shifting (BEPS) :税源侵食と利益移転
このように多国籍企業が国際的な税制の隙間や抜け穴を利用して租税を回避し、税負担を軽減している問題をBEPSと呼び、これに対応するためOECDは「BEPS project」を発足しています。
このニュースでの注目点は、納税義務を言い渡したのがEUだという点です。アイルランド政府としては、アップルが追徴税を支払うことになるとアイルランドに拠点を置く他の企業が転出してしまう可能性が高くなるため、短期的には税収が増えるにもかかわらず、この判決を好ましく思っていません。そこでアップル社とともにヨーロッパ司法裁判所(European Court of Justice)に異議を申し立てるとのことです。
法に触れてさえいなければ正しいことなのかと考えさせられる、今後も注目のニュースです。
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