第59回 アベノミクス
皆さん、こんにちは。先週はケニア・ナイロビで開催された第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)で多くの刺激を受けて戻ってきたところです。安倍首相をはじめ54か国の首脳が参加する大きな国際会議で、日本とアフリカの関係強化が訴えられました。
ところで安倍首相と言えば、海外の報道でも「アベノミクス」がよく取り上げられます。開始されてから3年たった今、その効果や今後の政策についてよく議論されるので、今回はアベノミクスを語るにあたっての必須の語彙を取り上げます。
1.三本の矢
アベノミクスの3つの基本方針のことを安倍首相は「三本の矢」と表現していますが、英訳するとどうでしょう?
ふつう経済政策にarrow(矢)という言葉は用いないので、”three arrows”と直訳する場合は書き言葉の場合引用符が付けられます。この分野のことを知っている人にはthree arrowsで十分通じますが、一般的にはthree pillars(三本柱)と言ったほうが分かりやすいでしょう。
2.大胆な金融政策
第一の矢とされる金融政策(monetary policy)ですが、これは日銀が行っています。金融政策は「緩和」と「引き締め」に分かれますが、ここでは緩和、つまり世の中に流通するお金の量を増やす政策のことで、英フィナンシャル・タイムズ紙はmore aggressive monetary easing from the Bank of Japanと説明しています。(金融政策については第31回参照)直訳のbold monetary policyより具体的ですね。
3.機動的な財政政策
二本目の矢は国が行う経済活動の政策、財政政策を通して経済に影響を与える方策を指します。「機動的」を直訳しflexible fiscal policyとかfiscal “flexibility” と訳されますが、結局はこちらも大胆にどんどん国のお金を使って経済を活性化させましょう!という刺激策なので英フィナンシャル・タイムズ紙はa massive fiscal stimulusと表現。expansionary fiscal policyとも言われます。
4.民間投資を喚起する成長戦略
「新たな成長戦略」とも言われますが、一番分かりにくいのがこの3本目の矢ではないでしょうか。直訳するとa growth strategy aimed at promoting private investmentですが、英フィナンシャル・タイムズ紙によるとstructural reforms to boost Japan’s competitiveness。1本目と2本目の矢が短期的な成長を目標としているのに対し、成長戦略(構造改革)は中・長期的な効果を狙っています。
以上、アベノミクスの基本用語を紹介しました。あの手、この手を使ってもなかなか期待通りの成果が出ていないので批判されがちなアベノミクスですが、今後の追加策が効果を発揮することを願います。
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