INTERPRETATION

第18回 IR関連・第2弾、「○○利益」の英訳は?

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

みなさん、こんにちは。冬の訪れを感じる今日この頃ですが、イギリスではハロウィーンの翌週末は、各地で花火大会が開催されます。日本では「花火」というと夏の風物詩なので意外に思う方も多いことでしょう。これは、1605年11月5日にカトリック教徒が議会を爆破し国王を殺害しようと企んだのですが、寸前で発覚し、未然に事件を防ぐことができたことをお祝いするためです。ガイ・フォークス・デーとして知られています。

さて今月はIR通訳に出かける方も多いと思うので、前回に引き続きIR用語を取り上げます。

企業経営で欠かせないのが「利益」。最近では「企業が目指すのは “利益” だけではいけない、社会的責任も持たねばならない」などと言われますが、投資家相手の話で「利益」の話は欠かせません。ただ、収益計算はややこしくて「利益」といっても何を含め、何を差し引くかで「粗利益」、「営業利益」、「経常利益」、「純利益」などがあるので、それぞれの意味を把握した上で訳語を覚えなければなりません。

では、まずは「粗利益」。正式名称は「売上総利益」ですが、一般には「粗利(アラリ)」と言われるので要注意です。これは売上高 (revenue) から売上原価 (COGS/ cost of goods sold) を差し引いた額で、英訳はgross margin。またrevenueは計算書の最上行に記入されるのでtop lineとも言われます。

次に「営業利益」。これは本業の儲けを表す数値で、粗利益からさらに「販売費、一般管理費 (SGA/ selling, general and administrative expenses) 」を差し引いて残った利益。英訳はoperating profitやoperating earningsですが、EBIT (Earnings Before Interest & Tax、「イービット」と発音)と言うこともあります。

そして「経常利益」。こちらは本業の儲け以外の利益(受取利息/interest received、受取配当金/dividend receivedなど)が加えられ、営業外費用(non-operating expense) や支払利息 (interest expense) などを差し引いて計算します。英訳は、current profit, current earnings, ordinary profitなど。

最後に「純利益」。企業活動には本業以外にも色々な収入や支出がありますが、すべて精算した後「最後にいくら残ったか」を示す数値。「当期利益」「当期純利益」「最終利益」などとも言われますが、英訳はnet income、net profit、net earning。また計算書の最下行に記されるのでbottom lineとも。ちなみにbottom lineは慣用表現では「一番大切なこと」という意味。結局、一番大切なのは、「いくら入ってくるか」ではなくて「いくら残るか」ってことですね!

会計の概念はややこしいし、用語もたくさんあって、完全マスターはなかなか難しいと思いますが、少しずつでも知識を増やしていけるといいですね。今回は「○○利益」を取り上げました。お役に立てば幸いです。

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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