第36回 Brexit 特集 その1
皆さん、こんにちは。この1カ月、バズワードについてお伝えしてきましたが、その間にいくつかのグローバルニュースが世間を騒がせていますね。アメリカでは大統領選の指名候補争いが意外な展開を見せ、イギリスではEU離脱を問う国民投票の実施が発表され離脱か残留かに関し連日活発な議論が行われています。私としては、米大統領選も気になりますが、本コラムはイギリス発信なので、やはり後者を取り上げ、この問題を理解するために役立つようなキーワードおよびキーポイントを数週間に渡りお伝えしていきたいと思います。これを機会にヨーロッパが抱える問題について一緒に考えてみませんか。
1.Brexitとは?
まずBrexitという新語については第22回で少し説明しましたが、BritainのBrにExit(退出)をくっつけて作られた新しい言葉。2012年から使われているGrexit(Greece + Exit)に倣って出来た言葉ですが、ここで注意するべきなのはギリシャの場合はEU(欧州連合)ではなくてユーロ圏(EUの通貨が使われている経済圏)からの離脱の話でしたが、イギリスの場合は、今でも英ポンドを使っているので、通貨の話ではないということです。またギリシャの場合、大半のギリシャ国民はユーロ圏もEUも出る気は全然なかったけれど、多額の借金を返せないためにユーロ圏からから追い出されるのではないかと世界中が心配し、話題になっていたのに対し、イギリスの場合は元々あったヨーロッパに対する懐疑心が年々増し、自分たちで好きなようにやったほうが国が繁栄するだろう、という声があまりにも高まったためキャメロン首相はEU離脱に関する国民投票を2017年までに行うことを公約に掲げ、去年の総選挙で予想外の勝利を収め、現政権についたといういきさつがあります。
ところでこのBrexitという言葉ですが、日経新聞が「ブリクジット」とカタカナ表記しているのに驚きました。Exit(エグジット)にBrがついた言葉ですし、イギリスで報道されている原音に最も近いカタカナ表記は「ブレグジット」で、英語では “e” にアクセントがあります。
2.「残留」「離脱」を英語で言うと?
日本の報道では「残留」「離脱」など、ふだんの会話では使わないような漢語が使われていて難しい話のように感じますが、英語では「残留」はremainまたはstay、「離脱」はleaveと中学英語で習うような日常会話レベルの表現が報道でも使われます。また「EU残留派」はpro-EU campaignerやthe Remain camp、「離脱派」はpro-Brexitやthe Leave campと呼ばれています。Eurosceptic(ユーロスケプティックと発音)は超国家的なEUに対して反感を持つ人たちのことで欧州懐疑主義と訳され、「離脱派」の可能性が高いです。キャメロン首相は”改革された”EUに残ることを訴えていますが、与党内の有力政治家の中でも意見は分かれていて、特にロンドン市長のボリス・ジョンソン氏が声高々にBrexitを訴えています。ちなみにファーストネームの「ボリス」で国民から親しまれている、このロンドン市長は次の首相有力候補と言われています。
また「イギリスのEU残留」という意味でBremainという新語もあります。説明するまでもなく、BritainとRemainをくっつけた造語です。ただ、Brexitは毎日のように見聞きするのに対し、Bremainはそれほど浸透していません。
以上、今回は上記の2点にしますが、本件の歴史的背景や論点について次回以降も解説を続けます。ご質問などはhi-career@ten-nine.co.jpまでお送りください。
ところで、6月23日に予定されている、この国民投票、英国在住19年になる私は今も日本国籍なので投票権がありません。ところが来月18歳になる愚息にはなんと投票権があることに気が付き驚きました! それでグリーン家の食卓でもEU離脱問題についての議論が盛り上がっています。
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