第4回 「追い風」「向かい風」とは?
営業報告、事業展開などの文脈で「追い風」「向かい風」という表現がよく使われます。
例:
1 輸出業者にとって円安が追い風となっている
2 消費税引き上げという向かい風を受けながらも好調が続く
ここでは説明するまでもなく天気の話ではなくて、「追い風」は「業績アップや景気上昇につながるような要因」、「向かい風」はその逆で「業績低下や不況につながるような要因」のこと。
では、これらの例文をどのように英訳しますか。
こういう慣用表現は、直訳が目標言語(この場合は英語)においても同じニュアンスで使われているかどうか、そうでなければ代わりにどのような表現が使われるのかを知っておく必要があります。
幸い、「追い風」「向かい風」に関しては、直訳のtailwind(追い風)、headwind(向かい風)が同じ意味で使われるので、上記の例文は次のように訳せます。
1 A weaker yen is a tailwind for exporters.
2 We have maintained good performance although the consumption tax hike was a headwind.
通訳では、臨機応変に対応する力も必要です。「追い風」「向かい風」の英訳が思い出せない、または英語で同じように使われるか自信がない、という場合は、別の表現を使って、同じ意味を伝えることができればいいですね。また「円安」「円高」は英語では色々な表現がありますし、消費税は日本のメディアではthe consumption taxと訳されますが、ヨーロッパではVAT(Value-added tax:付加価値税)が使われます。VATはすべての商品に課されるのではない(イギリスでは食料品や子供服などは無課税)という点で日本の消費税とは少し異なりますが、分かりやすさを重視してヨーロッパ人にはVAT、アメリカ人にはSales Taxと訳したほうがいい場合もあると思います。
というわけで、言葉ではなく意味を重視した訳例は次の通りです。
1 The depreciation of the Japanese yen has boosted exports.
2 Our business is going strong despite the VAT rise.
など、逐語訳の枠を超えて他にも色々な訳が考えられます。日本人が英訳するとき、「円高」「消費税」などの専門用語はきちんと訳せてもaやtheが抜けていたり、単数形・複数形の誤りがよくあります。なかなか完全にマスターするのは難しく私も修行中ですが、常に意識をすることで、より正確な英文を作れるようにはなると思います。
「追い風」「向かい風」は、IR通訳でも必須用語なので、日英の表現を使いこなせるようになるときっと役に立つでしょう。
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