INTERPRETATION

第2回 ギリシャ危機、主な関係者は?

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

こんにちは。7月も中旬となり、日本では暑さが本格的になってきたころでしょうか。こちらイギリスは珍しく快晴続き、今が1年でもっとも過ごしやすい季節です。
今回は、ビジネスニュースで毎日流れているギリシャ危機を取り上げます。欧州の未来、ひいては世界の未来を左右するギリシャ危機ですが、執筆時点では、ギリシャが追加融資を受けてユーロ圏に残るのか、ユーロ離脱となるのか、まだ分かりません。どちらにしても、私たちへの生活になんらかの影響がある可能性は高いですし、通訳の場でギリシャ危機が話題になることも多いでしょうから、英語・日本語の両方でこの問題を理解することは私たち翻訳・通訳者にとって大切だと思います。
事態が刻々と変化しているので、今回はBBCニュースを参考に、この話題で登場する主な人物・役職を取り上げます。
では関係者(1~7)と役職(A~G)を7つずつ挙げます。
各関係者の役職名を下のA~Gから選んでください。また、名前をカタカナ書きにするとどうなりますか。
1. Mario Draghi
2. Jean-Claude Juncker
3. Christine Lagarde
4. Angela Merkel
5. Jeroen Dijsselbloem
6. Alexis Tsipras
7. Francois Hollande
役職名:どれが誰の役職か、また各職の訳語を考えてみてください。
A. Chancellor of Germany
B. Managing Director, International Monetary Fund
C. European Commission President
D. President of the European Central Bank
E. Greek Prime Minister
F. President of France
G. President of the Eurozone Finance Ministers Group
いかがでしたか? ヨーロッパの政治経済は他の地域にない複雑さがあります。上記7項目、すべてすらすらと答えられたとすれば、見事なヨーロッパ通です! 
では、解説。
1. Mario Draghi(マリオ・ドラギ)、President of the European Central Bank(欧州中央銀行総裁)。現在19カ国が加盟する欧州単一通貨ユーロを導入したユーロ圏の中央銀行のトップを務める。イタリアの経済学者で、あだ名は「スーパーマリオ」。
欧州中央銀行は通常ECBと略される。ギリシャに巨額の融資をしている債権者(creditors)の1つ。
2. Jean-Claude Juncker(ジャン=クロード・ユンカー)、European Commission President(欧州委員会委員長)。欧州連合(EU)の政策執行機関である欧州委員会(European Commission)のトップ。欧州連合の役職ではもっとも強力な権限を持つと言われ、「EU Chief」とも称される。カタカナ表記では「ユンケル」とも。
3. Christine Lagarde(クリスティーヌ・ラガルド)、Managing Director, International Monetary Fund(国際通貨基金専務理事)。国際金融の安定性と金融に関する協力の推進に取り組む国連専門機関IMFのトップ。おしゃれなフランス人、元シンクロナイズドスイミングの選手で、分かりやすい英語を話す。
IMFは、ECB、EUと共にギリシャに多額の融資をしている。ギリシャはIMFからの融資16億ユーロの返済期限が6月30日だったが返済できず、事実上の債務不履行に陥っている。
4. Angela Merkel(アンゲラ・メルケル)、Chancellor of Germany(ドイツ首相)。ご存知の通りイギリスはユーロ圏には入っていないので、ユーロ圏でもっとも強力な国はドイツであり、その国の首脳としてギリシャ問題でも頻繁に登場する。ドイツ国民から母親のように慕われている。その支持を維持するためにも(?)、ギリシャには常に強硬姿勢で接している。
「ドイツ首相」は英語ではPrime MinisterではなくChancellorが使われることに注意! ちなみにイギリス政治の話でChancellorという役職名を聞いたらそれはChancellor of the Exchequerの略で「財務相」のこと。ダイエットと新しい髪型でイメージアップを図るジョージ・オズボーン氏が現在のイギリス財務相。
5. Jeroen Dijsselbloem(ユルン・デイセルブルーム)、President of the Eurozone Finance Ministers Group(ユーロ圏財務相会合議長)。ユーロ圏各国の財務相による会合(略称:ユーログループ)の議長を務めるオランダ財務相。
6. Alexis Tsipras(アレクシス・チプラス)、Greek Prime Minister(ギリシャ首相)。反緊縮政策を訴え、ギリシャ国民の支持を受けて今年1月に首相に就任して以来、上記の人々と激しい交渉を重ねているが、今のところ公約(ユーロ圏に留まりながらも追加緊縮政策は行わない)が実現できるかどうかは極めて疑わしい。それでも、ノーネクタイに余裕たっぷりの笑顔なのは真の政治家だからか、それともまったく場の空気が読めないからか?
7. Francois Hollande(フランソワ・オランド)、President of France(フランス大統領)。2012年のフランス大統領選で当時のサルコジ大統領を下して勝利を決めた社会党の大統領。ユーロ圏ではドイツに次ぐ主要国のトップとして、ギリシャ問題にも深く関わっている。ただし、「フランス史上最も人気のない大統領」とも言われ、影が薄い。
以上、私見を含めて、ギリシャ危機に関わる重要人物とその役職を紹介しました。今後、ギリシャ問題に触れる際、少しでもお役に立てば幸いです。

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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