INTERPRETATION

第31回 「マイナス金利政策」を英語で言うと?

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。相変わらず、どーんよりとした厚い雲が広がるイギリスの冬ですが、それでも2月に入ると日照時間が少しずつ長くなっているのを感じます。すでにあちこちで花も咲き始め、春の兆しに嬉しく思っています。

さて、今回は世界に報道された日本の経済ニュースを取り上げます。

1月29日に日銀がマイナス金利政策を発表したことで世界の経済界をあっと驚かせました。では「マイナス金利政策」は英語で言うと何でしょうか?

ここではカタカナの「マイナス」につられて英語でminusと言わないように気を付けましょう。正しくはNegative Interest Rate PolicyでNIRPと略されます。これまでのゼロ金利政策(Zero Interest Rate Policy)では期待通り経済を刺激することができなかったため、思い切って金利をマイナスにする、つまり預金をすると利子の分が増えるのではなく減る、という政策で、市場にお金を出回らせることを目的としています。

ただし今回のマイナス金利は個人が預けている預金ではなく、各金融機関が日本銀行に預けている預金にのみ適用されるので、私たち個人の銀行預金がだんだん減っていくわけではありません。このマイナス金利政策は昨年末に本コラムで取り上げた米国の利上げとは逆の動きですが、ヨーロッパではユーロ圏をはじめ、デンマーク、スイス、スウェーデンなどが1年以上マイナス金利を導入しています。

これからローンを組んで住宅や自動車の購入を考えている人には朗報ですが、二昔前のように預金の利子で暮らすことを夢見ていた人には夢がさらに遠のきました。「お金は貯めるものではなく、どんどん使うものだ」と奨励している政策ですから。

このように世の中に出回るお金の量(通貨供給量:money supply)を増やし、企業の資金調達を容易にし、経済を刺激しようという政策は金融緩和政策(easy monetary policy)と言われます。難しい経済用語のようですが、easyという語が使われているのが面白いですね! ここでの対義語はdifficultやhardではなくてtight、つまりtight monetary policy(金融引き締め政策)。またeasyの動詞形ease、tightの動詞形tightenも使って柔軟に英訳できるといいですね。例えば、「日銀がさらなる金融緩和を決定」だとBank of Japan decided to ease monetary policy further、「米国が10年ぶりに金融引き締め策をとった」はUS tightened monetary policy for the first time since 2006など。

今回のマイナス金利政策は個人預金には適用されませんが、円安(cheaper yen, weaker yen)につながることで、それぞれプラス・マイナスの影響を受ける人は多いかと思います。いずれにしても、今回のさらなる金融緩和政策が功を奏し、日本経済が活発になることを期待します。

以上、マイナス金利政策と関連用語を取り上げました。お役に立てば幸いです。

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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