INTERPRETATION

第26回 新年の目標設定はSMARTに!

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

皆さん、明けましておめでとうございます。

早速ですが今年の抱負は立てられましたか。「どうせ立てても三日坊主だし…」なんて言わないで、今年こそはSMARTな目標を立てて、ぜひ実現に向かって一歩でも進めるといいですね!

でもSMARTな目標って何?という方もいるかもしれません。英語ではSMART criteriaとか、SMART Goalsとか呼び方はいくつかありますが、この考え方は、経営戦略を含め欧米のビジネス界で広く導入されています。私の勤務するロンドンメトロポリタン大学の通訳修士課程では、授業ごとの短期目標、学期ごと(または1年)の中期目標、そして3~5年を念頭に入れた長期目標を立て、達成具合を確認しながら進めています。そのときに設定する目標はSMART基準を満たしていることを確認します。

では、SMARTって何でしょう。これは次の単語の頭文字をとったものです。

• Specific(具体的)

• Measurable(測定可能)

• Achievable(達成可能)

• Realistic(現実的)

• Time-based(期限を設定)

ただし、AはAgreed upon(同意している)、RはResult-oriented(成果に基づいているか)など、他のバージョンもあります。

いずれにしても、単に「売り上げを伸ばす」「ダイエットする」「語学力をアップする」ではなく、

• 今年の上半期で商品Aの国内販売を20%増やす

• カロリー摂取・消費量の記録をつけ、夏休みまでにウエストを3㎝引き締める

• 毎日ビジネスに関連する新しい英単語を2つ学び、その単語を使った文章を書く

など、期限を設け、現実的に達成可能な数値を入れることで、達成が明確になるし、達成できなくても自分がどの程度進んだのかを確認することができます。

ロンドンメトロポリタン大学での実際の例を挙げると、「英語の表現力をつけたい」という、ある学生は「毎日10分、The Economist誌の記事を10分音読する」という目標を掲げ、週ごとに達成度を確認しています。また達成具合によって、次の目標を調整します。

では、こうやって指導している私自身の昨年の目標「年末までに2kg減量」というSMARTな目標は達成できたのか、恥を忍んで発表すると……。YESかNoかと問われれば、答えはNOでした(涙)。「3歩歩いて2歩下がる」というような進み具合で残念ながら目標達成には至りませんでした。けれども、それに向けて努力はしたし、100%の達成はできなかったけど50%くらいは達成できたことで、自分を称えました。

「達成可能な」目標を設定したつもりでも、色んな事情により、必ずしも「期限内に」達成できるとは限りません。それでも、達成できなかったからといって落ち込んだり、あきらめたりするのではなく、どうすれば達成できていたかを考え、次の目標設定にその学びを取り入れることが大切だと思います。目標の下方修正も、ときには必要でしょう。

目標達成のためのもう一つのアドバイスは、「大きな長期目標を達成するために、小さな短期目標をたくさん設定する」ということ。「1年で本を20冊完読する」というのも構いませんが、「2週間で1冊」にすると目標達成の機会が増え、達成時の喜びを感じる回数も増えます。「喜びを感じること」は脳に刺激を与え、脳の働きを高めるので、スピードが要求される通訳の現場でも役に立つでしょう。ですから、小さな目標をたくさん達成して、その度に自分にWell done!と声をかけるとよいと思います。

というわけで、ぜひSMART原則に合った新年の抱負を立て、実現に向けて一緒にがんばりましょう。

本コラムでは、皆さまのご意見・ご要望にもお応えできたらと思っています。これまで取り上げた内容の続編も含め、リクエスト・ご感想をhi-career@ten-nine.co.jpにてお待ちしています。

では、学び多き1年となりますように。

Written by

記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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