INTERPRETATION

第22回 今年のWord of the Yearは?

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

みなさん、こんにちは。今週はパリからお届けしています。ヨーロッパでは同時テロ事件以降、中止・延期になった会議も多い一方で、「テロには屈しない」という強い思いから、予定通り決行された国際会議はCOP 21だけではありません。超厳戒態勢が敷かれているパリの中心地に世界中から何百人もの代表者が集まり、「予定通り開催」の意義深さを共に改めて共有する機会となりました。

さて、早くも師走に入り、いよいよ年末となりました。この時期には1年を振り返ったニュースが色々と流れますが、辞書編纂の経験もある私が毎年注目しているのは、ユーキャン新語・流行語大賞や英オックスフォード辞典が発表するWord of the Yearです。

オックスフォードのWord of the Yearには今年初めて、絵文字が選ばれました! うれし泣きの顔を表す「Face with Tears of Joy(U+1F602)」です。

Wordとして絵文字が選ばれたことも興味深いですが、日本語にかかわる者としては絵文字の英語訳がemojiであること、さらに「絵文字の複数形はemojiもemojisも可」と注釈されている点も、複数形のない日本語の特徴が反映されていて興味深いです。

また英語に元々存在したemoticonという言葉はemotion とiconが合わさった言葉で、emojiと前半が似ているのは全くの偶然だと説明されています。原文はこちらを参照してください。

http://blog.oxforddictionaries.com/2015/11/word-of-the-year-2015-emoji/

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最終候補に挙がったのは、次の言葉。いくつ馴染みがありますか?

1. ad blocker, noun: A piece of software designed to prevent advertisements from appearing on a web page.

2. Brexit, noun: A term for the potential or hypothetical departure of the United Kingdom from the European Union, from British + exit.

3. Dark Web, noun: The part of the World Wide Web that is only accessible by means of special software, allowing users and website operators to remain anonymous or untraceable.

4. on fleek, adjectival phrase: Extremely good, attractive, or stylish.

5. lumbersexual, noun: A young urban man who cultivates an appearance and style of dress (typified by a beard and check shirt) suggestive of a rugged outdoor lifestyle.

6. refugee, noun: A person who has been forced to leave their country in order to escape war, persecution, or natural disaster.

7. sharing economy, noun: An economic system in which assets or services are shared between private individuals, either for free or for a fee, typically by means of the Internet.

8. they (singular), pronoun: Used to refer to a person of unspecified sex.

皆さんは、どのくらいご存知でしたか。2のBrexitは以前本コラムでも取り上げたGrexitの親戚のような言葉で「イギリスのEU脱退」を指しますが、2017年までに国民投票が行われることになっているのでBrexitを巡る議論が盛んに行われています。Dark Web(ダーク・ウェブ), refugee(難民), sharing economy(共有経済)は英語メディアだけでなく、日本のメディアにも出てきますが、4のon fleekと5のlumbersexualは一部(特に若い子)で使われているだけなのではないかと思います。lumberjack(木こり、チェックシャツを着てひげを生やしている)とmetrosexual(美意識が高く、都市部に住むストレート、つまり女性を好む男性)を合わせた造語、lumbersexualという言葉自体はあまり知られていないけれども、そういうタイプの男性が最近多いことは割と知られているようです。

8のtheyを単数で使う、つまり男性か女性かを明らかにしたくないときに使うという用法は昔からありますが、今年その傾向がますます高まったために候補に選ばれたようです。日本語にはない問題で、訳語をつけれられない語義ですね。

ところで英フィナンシャルタイムズ紙(12月2日付)のトップニュースにびっくりしたので紹介します。

Facebook founder pledges $45bn giveaway: Mark Zuckerburg has pledged to give away 99 per cent of his Facebook shares – worth about $45bn – during his lifetime, as he announced the birth of his first child.

Facebookの創立者、マーク・ザッカバーグCEOは、第1子の誕生の報告とともに、同社の持ち株99%(時価、450億ドル相当)を慈善事業に寄付すると発表。マイクロソフトのビル・ゲイツ氏、投資家のウォレン・バフェット氏に続き、巨大な資産を社会貢献に役立てるという、なんとも素晴らしいニュースです。この寄付金が有効に使われることを願います。

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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