INTERPRETATION

第157回 意外に間違えやすい発音

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。先週は、1週間ロシアのサンクトペテルブルグで過ごしました。凍り付くほど寒かったのですが、とても美しい街で特に夜のイルミネーションが素敵でした。夏も冬もどちらも魅力がある街だと思います。西欧化の象徴として築かれ、「北のベニス」とも呼ばれるこの街はロシアの古都とはいえヨーロッパの街並みと似ています。

ところで通訳現場では日本人が話す英語を聞くこともよくあります。皆さん、「通じる英語」をお話しになりますが、「共通する発音ミス」があることに気が付きました。ちょっとしたことですが、正しく発音することで伝わりやすい英語になると思うので今週のトピックとして取り上げます。

1.eの発音
まずは、日本語でカタカナ語としてよく使われている英単語。例えばmediaですが、ここでのeは、「エ」ではなく「イー」。「メディア」ではなく「ミ―ディア(miː.di.ə)」。ecosystemやeco-friendlyはイギリスでは「イーコゥシステム(ˈiː.kəʊˌsɪs.təm)」、「イーコゥフレンドリー(ˈiː.kəʊˌfrend.li)と発音されます。アメリカの発音は「エ」に近く聞こえますが、いずれにしてもアクセントは第1音節。アクセントの位置を正しくすると聞いているほうは違和感なく理解できます。

2.oのスペル、短母音
ロンドンは発音記号ではˈlʌn.dənなので、月曜日Mondayの第1音節と同じ母音です。Mondayを「モンデ―」という人はあまりいないけれどもLondonを「ロンドン」という人は多いです(余談ですが、学生時代のバイトで塾の英語講師をしていたとき中1のやんちゃな男子が曜日のMonday, Tuesdayを「もんでぇー、チューしてぇ」とジェスチャー付きで覚えていたのが忘れられません。彼は今頃どうしているのでしょう? 笑)。
同じoの短母音でも、hotはイギリス英語では「ホット」に近く聞こえます。アメリカでは「ハァット」。

3.thの音
thは舌を噛んで発音しますが、それをしないとthink(思う)がsink(沈む)に、thank(感謝する)がsank(沈んだ)と意味が変わってしまいます。これは日本人以外でも苦手な人が多いです。ノンネイティブの場合、thの音がs, z, t, dなどに置き換えて発音している人がいるので、聞き取りの際は話し手の癖を掴めるといいですね(これも、余談があります。インド人の友人に “See you at テリトリ.”と言われ “テリトリ?” と聞き返しても “Yes テリトリ”という返事。Three thirty(三時半に会いましょう)と言っていると気が付くまでずいぶん苦労した覚えがあります)。羞恥心を捨て、舌が歯の間からはっきり見えるくらい突き出して発音するといいでしょう。

4.siの音
sitやseatを「スィ(si)」ではなく「シ (shi)」と発音しているのを聞いてドキっとするのは私だけではないでしょう(解説割愛)。

5.Fの音
fは、軽く下唇を噛みます。そうしないとhに聞こえます。数週間前に日本人ジャーナリストがトランプ大統領に英語が通じず話題になりましたが、彼の発音の問題の一つはfocusがhocusに聞こえたことです。hocusは単独ではあまり使われませんが、hocus-pocusというと「まやかし、迷信」の意。

以上、このようなちょっとした誤りは外国人のなまりに寛容な方には通じるでしょうが、前日の記者会見のように混乱を招くこともあります。ちょっと発音を改善するとぐっと伝わりやすくなることでしょう。また新しい単語を学ぶときは必ずアクセントの位置を確認しましょう。音節が多い語は、第1アクセントと第2アクセントの位置を確認し、声に出して覚えましょう。

以上、お役に立てば幸いです。

 

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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