INTERPRETATION

第149回 貿易協議「FFR」って何?

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。早くも10月に入りました。先月は番外編としてイギリスの大学入学に関する話題をお届けしましたが、今週はビジネス・経済の話に戻りたいと思います。そこで先週ニュースで見聞きした「FFR」を取り上げます。

1) FFRとは、何の略でしょう?

これは新たな日米の貿易協議(trade talk)で、free, fair and reciprocal(自由で公正、相互的な)の略です。

2) 誰が協議に参加する?

日本側は茂木敏充(もてぎ・としみつ)経済再生担当相。日本政府によるタイトルの正式な英訳はMinister in charge of Economic Revitalizationとなっていますが、海外メディアの英語報道では簡単にJapanese Economy Ministerが多いようです。

米国側は通商代表部(USTR)ロバート・ライトハイザー代表(U.S. Trade Representative Robert Lighthizer)。

3) どうして話題になっている?

トランプ氏の選挙公約の一つが「TPP(環太平洋パートナーシップ)からの脱退」で、公約を守り米国はTPPから脱退しました。トランプ大統領は多国間交渉(multilateral talk)よりも二国間交渉(bilateral talk)のほうが優位に立てると思っているので、TPPを出て、二国間による自由貿易協定(free trade agreement/ FTA)を締結したいと主張してきました。日本は米国がTPPに復帰することを望んでいましたが、それはあきらめてついに二国間交渉に入ることに合意したと日米首脳会談後に発表され話題になりました。

4) TAGって何?

Trade Agreement on Goods(物品貿易協定)の略。日米間で今後「物品貿易協定(TAG)」合意に向けて交渉されるとのこと。TAGにはモノへの関税の撤廃・削減などが含まれます。FTAには電子商取引(e-commerce)や知的財産の保護(Intellectual Property Protection)、サービスの自由化(liberalisation of services)などが含まれるのに対し、TAGはモノの貿易に限られます。

米国は日本に対し最大25%の自動車追加関税(an additional 25% tariff on autos and parts)をかけると脅していましたが、交渉中は追加関税は回避されることも合意されています。

以上、日米の貿易協議関連について必須用語を取り上げました。お役に立てれば幸いです。

今年もあと四分の一を残すことになりました。あと3か月、充実した秋をお過ごしください。

2018年10月1日

(ブリストル大学の学生寮の食堂)

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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