INTERPRETATION

第102回 EdTechとは?

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

こんにちは。学校は夏休みに入りましたが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。

さて、今回は最近の英エコノミスト誌でも特集されたEdTechを取り上げます。

EdTech(小文字でedtechとも)という言葉は聞いたことがありますか? なくても想像がつく通りEducationとTechnologyを掛け合わせた造語で、ITやAI(人工知能)などの最新テクノロジーを教育に取り入れることを意味します。第97回で取り上げたfintechの仲間と言える用語ですが、今後の投資先としても注目されています。

これまでにもITを教育に取り入れる動きは、先進国で見られましたが、意外にも成果は上がっていないそうです。英エコノミスト誌2017年7月22日号「Together, technology and teachers can revamp schools」によると、生徒一人あたりのPCの数が増えても、学力向上にはつながっていないようです。逆にポルトガルで行われた調査では、ネット回線が遅く、YouTubeなどのサイトへのアクセスを禁止した学校では、ハイテクの学校よりも成績が良かったそうです。

それでも、今後のEdTechに期待の声が上がっているのはなぜでしょう?

まずはpersonalised learning。個人の能力に合わせ、弱点を克服し、長所をさらに伸ばせるようなテーラーメイドの個別学習が可能になるということ。

また教育における格差が縮まること。EdTechの開発には、かなりの資金がかかりますが、いったん適切なソフトが開発され、貧困地域にもデバイスが届くようになれば、人件費よりも低いコストで高いレベルの教育を提供することができ、格差の解消につながることが期待されます。

ただ同記事の最後にはこう書かれています。

the potential for edtech will be realised only if teachers embrace it.

(せっかくのエドテックのポテンシャルも教師がそれを受け入れない限り実現されない)

そしてこう続きます。

Scepticism should not turn into Luddism.

(懐疑心を抱いたとしても、だからと言ってテクノロジーを否定してはならない)

Luddismというのは、イギリスで19世紀に産業革命が起きたころ、新しい技術に仕事を奪われることを恐れ織機を破壊した労働者Ned Luddの名前から派生した語です。新しい技術に反対する人をLuddite、技術革新に反対することをLuddismと言います。

私自身、教育に携わる者として、EdTechは大変興味深いトピックです。グローバル社会の発展のために、質の高い教育は欠かせません。既にソーシャルメディアやクラウドでの教材共有、ウェビナーなどを取り入れた通訳トレーニングを提供していますが、今後もテクノロジーの進化をどんどん教育に取り入れていきたいと思っています。

2017年7月31日

Written by

記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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