第101回 Key principles of the single marketは守られるのか?!
皆さん、こんにちは。しばらくお休みさせていただき失礼いたしました。今月の初旬はポーランドで開催された第41回世界遺産委員会で通訳をしていました(参照記事・写真)。「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」が諮問機関イコモスの厳しい勧告を覆し、無事8つの資産すべて認められた感激の瞬間を現場で体験でき、通訳者冥利につきる思いでした。
さて、先週Brexit(英国のEU離脱)関連で興味深い記事を見かけたので紹介します。
見出しはTony Blair says EU could compromise on freedom of movement(参照記事)。
トニー・ブレア英元首相については、現在20代以下のお若い方はどれくらいご存知でしょう? ちょうど20年前の1997年(ちょうど私が渡英した年)に、ずっと不調だった労働党を「ニューレーバー」というリブランディングで大成功させ、18年ぶりに保守党から政権を奪い、43歳の若さ(とgood-looking)で首相になりかなり話題になりました(今年のマクロン仏大統領のように?!)。その後、金融危機が起きる直前の2007年まで、イギリスが好景気だった10年間首相を務めた超大物政治家です。イラク戦争で強硬的に英国を参加させたことで国民の反感を買いましたが、EUの初代大統領にもなるかと噂されたほどの親EU派で、「ただの人」となった今でも世論に影響力を与えようと時々メディアを通して発言しています。
そのブレア元首相によると、「EU改革を訴えてマクロン氏が仏大統領選で当選したことにより、EUの改革が進む。その中にはthe key principles of the single market(単一市場の主要原則)、つまりthe freedom of movement of people, goods, services and capital(人、モノ、サービス、資本の自由な移動)も含まれる」とのこと。
これは、これまでEUが何度も訴えていた「単一市場に残るなら人の移動は制限できない」という主張に反します(第52回の1、第76回の2参照)。けれども第99回で紹介したトゥスクEU大統領からのラブコールと合わせて考えると、改革されたEUに英国が残留する(staying within a reformed EU) というオプションはもしかするとあり得るかもしれません。(ただし、今のところブレア氏の根拠不明な発言を批判する声が多数)
では、実際の交渉はどれくらい進んだのかというと、先週英国とEUの第2回協議が終了しました。月に1度、1週間の協議を行うことになっています(planning to hold a week of talks on a monthly basis)。次の協議は8月の最終週に予定されており、離脱に伴う清算金(the financial settlement / divorce bill)を優先課題にするとのこと。
以上、Brexitのアップデートでした。
日本やアメリカでの通訳現場でどれくらいBrexitが話題になるのか分かりませんが、ヨーロッパではどんな会議でも必ず出てくるというほど頻繁に話し合われる話題です。英国のEU離脱交渉の成り行きと合わせて、今後EU自体がどのように変革していくかも注目です。
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