第9回 使える単語の覚え方1
前回、英語をやり直す場合に、”TOEIC等の資格のためのやり直し”なのか、”ビジネス等で英語を使えるようにするためのやり直し”なのかを分けて考える必要があるという話をしました。ツールとして英語を使うことと英語のテストで点数を取ることは全くアプローチが違うために、一石二鳥を狙うと逆に遠回りになる可能性があります。
今回から具体的な英語のやり直し方法を考えていきますが、TOEIC等の資格の勉強が終わった方、またはそういう勉強が不要な方を対象として考えていきたいと思います。まずは単語から考えていきましょう。
学生時代にせよ、資格対策にせよ、ある程度の範囲が決まっていて、出そうな単語というのも決まっていました。出題パターンも決まっているので、「この単語は発音できないけど、日本語の意味さえ覚えておけばOK」とか「この単語は次にinが来るっていうのがポイント」とか「この単語を文章の中で見たことないけど、~っていう意味らしい」といったことを覚えた記憶はないでしょうか?単語の知識がテストで試されるとどうしてもこういったことを覚えておかないと点数が取れないので仕方ないのですが、資格試験の勉強が終わったら単語の覚え方も変えていく必要があります。
私が単語の覚え方の説明をするときに、忘却曲線の話をします。ご存知の方も多いと思いますが、ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスが19世紀に行った実験で、記憶と忘却の時間的関係を測定するために、「MEV」「YJK」といった意味のない3文字の綴りを記憶させ、一定時間後どの程度思い出せるかを実験したものです。学習直後100%覚えていたものが、時間が経過すると覚えていた割合は次のようになりました。20分後→58%、1時間後→44%、9時間後→36%、24時間後→26%、6日後→24%、1か月後→21%。完璧に覚えたと思っても、1時間経つと60%忘れ、翌日には70%忘れてしまうということです。
ここでもポイントは2つあります。1つは最初の24時間は急激に忘れるが、それ以降の記憶量はそれほど変わらない。この%が全員に当てはまるわけではないですが、早いタイミングで復習することがいかに大切であるかわかります。もう一つは”意味のない文字の綴り”を覚えたという点です。つまり無理やり機械的に覚えたものはこれくらいのスピードで忘れていくということなのです。
このことを単語を覚えるという作業に当てはめてみると、覚えた単語を24時間以内に何度か確認すると覚えている確率が高く、機械的ではないやり方で覚えた方が記憶に残りやすいということになります。皆さんが単語を覚えてから、同じ単語を次にいつ確認しますか?単語集にせよ、自分の作った単語リストにせよ、最初の単語から最後の単語まで覚えてから、また最初の単語に戻るか何日後かに復習するというパターンが多く、24時間以内に確認をしている人は少ないのではないでしょうか?
また機械的な暗記というのも単語集を使って覚えている人に多くみられます。単語集は膨大な情報から必要な情報をまとめてくれたものなので、それを覚えれば効率的に単語を覚えられそうですが、実はそれが機械的な暗記なのです。効率性を重視したつもりが実は遠回りになっているのです。
しかし本屋に行けば、単語集だけの棚があるくらい多くの種類の単語集が出版されています。それだけの需要があるのでしょうし、学生の頃から、単語集で単語を覚えてきたので、英語のやり直しも単語集から始めるという人も少なくないのでしょう。単語集の中にはよくまとまっているものもありますので、そのエッセンスをうまく取り込みながら、機械的な暗記を避けるポイントがいくつかあります。
次回はこの機械的な暗記を避けて、使える単語を身につけるポイントをご紹介したいと思います。
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