INTERPRETATION

通訳美人道「13.通訳美人の通訳学校受講術」

柴原早苗

通訳美人道

通訳美人道 通訳美人の英字新聞攻略術
第1ヵ条 何のために読むか、まず明確に!
 4月から新年度や新学年がスタートし、緊張感が高まったあたりでゴールデンウィーク。のんびり休んでいざ仕事に復帰したものの、ペースがダウンしてしまった。そんな状況からどうやってリカバーするかが今回のテーマです。今回の美人道では3分間活用術と題して、3分間でできるアイデアをお伝えします。
 格差社会や勝ち組・負け組などといわれる世の中ですが、こと時間に関しては誰もが24時間平等に与えられています。時間を有効活用すれば、より充実した日々が送れるはず。ぜひ参考になさってくださいね。
第2ヵ条 あえて駅の売店で買う
 一言で3分間といっても時計を見ないで正確に計るのは難しいものです。自分がやっている作業の内容次第で、3分間は長くも短くも感じられます。たとえば大好きな小説を読んでいたらあっという間に目的駅に着いてしまった、という経験は誰にでもありますよね。一方、通訳学校の授業で3分間逐次通訳となると、恐ろしく長く感じられるのでは?私自身、通訳現場で訳が出てこないときなど、わずか1~2秒が数十分ぐらいの長さに思えてしまいます。
 
3分間の具体例としては、(1)カップラーメンができるまで、(2)CNNニュースで放映される少し長めのレポート、(3)山手線の一駅(実際には2分少々)、(4)ヒットチャートで流れる音楽一曲分、などが挙げられます。
第3ヵ条 読むときは立って
 では3分間の計り方をどうするか?一番正確なのはタイマーです。通訳者がお勧めするタイマーは、テンキーで数字の入力がしやすいこと、画面が見やすいこと、サイレントモードがあること、などです。特に同時通訳ブースでタイマーをピッピと鳴らすことはできませんので、無音状態にできる機種が便利です。
 「3分間厳密にやらなくても」という方は、3分ぐらいのものを何か選ぶと良いでしょう。たとえば好きな音楽をかけて「この曲が終わるまで」と区切りをつけるのも一案です。
第4ヵ条 とりあえずすべてのページに目を通す
 読もう読もうと思っているものの、ツン読になったままの本、ありませんか?読みたいと思って買ったのに、読む前に別の本に魅了されて購入し、そのままというケースは誰にでも経験があるもの。この際、3分間タイマーをかけて集中して読んでみましょう。最初から、あるいは続きのページからなどと思わず、いっそのことパラパラとめくって興味のあるページだけ集中して読むのもお勧めです。自分が知りたい内容はページをめくるだけでも視覚的に飛び込んでくるはず。その直感を信じて、無理せず3分だけ本を読んでみましょう。
第5ヵ条 「少し興味ある記事」の読み方
 薬や化粧品は、直接肌につけたり服用したりするもの。数年前に買って薬箱やポーチの中に入ったまま、ということもあるのでは?薬は使用期限が過ぎたものは未開封でも思い切って捨てましょう。化粧品も1シーズン以上前のものは処分を。体につけたり取り込んだりするものこそ、安全なものにするよう心がけます。ちなみに私は洗面台に油性ペンを常備し、薬や化粧品を開けた際、開封日をパッケージに直接書き込んでいます。こうしておけば処分の判断がしやすくなります。
第6ヵ条 「とても興味ある記事」の読み方
 毎日使うお財布。ポイントカード大流行の現代、お財布もパンパンに膨らんでいませんか?3分間だけ時間を区切ってお財布の中も整理してみましょう。必要以上に現金を入れていませんか?何かと物騒な世の中、それに現金ならコンビニでいつでもどこでも引き出せる時代です。現金は最小限にしておきましょう。不要なレシートについては私の場合、ネットから家計簿をダウンロードして記帳しており、転記作業が済んだらレシートは処分しています。例外は保証書のある家電や高額商品。こうしたレシートは一定期間とっておきます。普段使わないクレジットカードは自宅に厳重に保管。何枚もお財布に入れたままでは、お財布を紛失したとき解約手続きだけで大変です。お店のポイントカードも月に1回以上行かないお店であれば作らないようにしています。ポイントカードは何度もそこで買わない限り、なかなかお得になりません。皆さんなりの基準を設けてポイントカード作りは厳選して。
第7ヵ条 電子辞書は常に持ち歩く
 最近は家電の多くがデジタル表示になり、たいてい時計がついています。初期設定で時刻を合わせたものの、ブレーカーが落ちたり停電になったりした際、止まってしまい少しずつ誤差が出てくることも。こと集合時間厳守の通訳者にとって、出発がギリギリになって電車に乗りそびれるわけにもいきません。この際、家中の時計を正確な時刻に合わせてみましょう。特にメールやファクスなど、ビジネス上の取引で使う機器に関しては、正確な時間表示が信頼につながります。
第8ヵ条 スクラップそのものを目的としない
 たとえば洗面台の歯ブラシホルダー。下の部分に水あかがたまっていませんか?洗濯機の水道蛇口のステンレス。ほこりがかぶっていたり、くもっていたりしているのでは?朝晩歯みがきをするとき、ティッシュでこうした場所をきれいにしてみましょう。掃除というとゴム手袋をはめて洗剤出してとつい大掛かりになりがちですが、ティッシュ一枚を使い、3分間でふき取れる箇所のみに集中します。ポイントは3分以上やらないこと。もっとやりたいと思ってもあえてやめておくことで、次回もまたどこかきれいにしようという気持ちになれます。これが長続きの秘訣です。
第9ヵ条 どうしても残しておきたい記事は?
 10年以上前、BBCラジオのインタビューである著名人が興味深いことを述べていました。今となっては誰のインタビューか思い出せないのですが、日々プレッシャーにさらされる仕事に携わっているというくだりは覚えています。その人は毎朝ビゼー作曲の「カルメン」序曲を聞きながら玉子焼きを作るのだそうです。カルメン序曲は3分30秒ほど。卵を割ってかき混ぜ、フライパンを熱して卵を炒め、お皿に盛り付けるとちょうど曲が終わるのだとか。しかもこの曲はテンポも良く、聞くだけで元気が出るメロディー。毎朝同じ作業ではあるものの、こうした「自分だけの3分間」を決めて、自分に気合いを入れ、新たな気持ちで一日を過ごすと述べていました。
 3分で気持ちを切り替えるというのは大事ですよね。
第10ヵ条 自分にぴったりの新聞を見つけてみる
 「3分捻出するのも難しい」「なんとなく面倒そう」という場合、どうすれば良いのでしょうか?答えはひとつ。時間を短くすれば良いのです。3分間が何だか億劫というのであれば、最初は1分にしてみましょう。キャリアカウンセラーの中本千晶さんは著書「ひとり仕事術」(バジリコ、2005年)の中で「1分間そうじ法」を勧めています。特に自宅で仕事をするのであれば、快適で機能的な環境は不可欠。そのために1分でも良いからどこかきれいにするよう述べています。
 また、予備校講師の安河内哲也氏は勉強時間について次のように述べています。

「できたら1日1時間。もし無理なら1日30秒」
「『30秒』といわれて、本当に30秒で勉強が終わることはありません。・・・気がついたときには10分とか20分はたっているものです。」

(「できる人の勉強法」中経出版、2006年)

 
つまり、最初に短めの時間を設定してみても、やり始めてみたら興に乗って時間がたっていたということもあるわけです。勉強時間にしても片付けなどにしても、いったん集中してしまえば占めたもの。皆さんも1日数分間、何かをやり遂げてみませんか?

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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