INTERPRETATION

通訳美人道「11.通訳美人の学び術」

柴原早苗

通訳美人道

通訳美人道 通訳美人の学び術
第1ヵ条 春は新しいことをするチャンス!
 春は学びの季節。NHKの語学講座も新規開講し、通訳学校や様々な習い事の広告が増える時期です。今年こそ何か新しいことをやりたい、または通訳者になりたいと思う方はぜひ挑戦してみましょう。思い立ったが吉日です。そこで今回の美人道では学校の選び方や学びのノウハウをお伝えします。
第2ヵ条 通学か通信講座か?自分のニーズを見極めるのがカギ
 新しいことを始める場合、まずは学校へ通うか、それとも通信講座をとるかを考えます。まったく新しい内容を学ぶのであれば、オススメは学校です。一人で学ぶ通信講座とは異なり、勉強仲間が増えますし、週一回のクラスならレッスンをベースに一週間のサイクルができて生活パターンも一定になるからです。そして何よりも「学校へ通う」ということは、自分へのコミットメントにもなります。
第3ヵ条 情報は複数から入手
 何を学ぶか決まったら、学校情報を集めましょう。募集要項や学校のウェブサイトだけでなく、たとえば通訳学校であれば「通訳・翻訳ジャーナル」などの雑誌や英字新聞の広告などにも目を通します。さらに口コミや現受講生などの意見も大いに参考になるでしょう。講師名がわかるのであれば、講師のプロフィールなども調べます。たとえば医学通訳を目指すのであれば、医学を専門にしている通訳講師に学ぶほうが、より専門的な知識を吸収できるはずです。
第4ヵ条 まずは体験レッスンを
 新しい学校に通う場合、ぜひ無料体験レッスンを受けてみましょう。学校の雰囲気、教材内容や授業の進め方などを知る格好のチャンスです。体験レッスンがなくても見学OKという場合もありますので、遠慮せずにぜひ問い合わせてみてください。教務スタッフの対応や学校との相性なども通学する上では大切な要因となります。
第5ヵ条 体験レッスンの先生は本コースの担当講師かチェック!
 学校によっては無料体験レッスンの際、人気講師が担当することがあります。その先生に引かれていざ受講してみたものの、開講してみたら別の先生だった・・・ということも。体験レッスンの際、その先生がどのコースを担当するのかもぜひ確認を。
第6ヵ条 どう選ぶか?私の場合。
 私の場合、学校選びのポイントは以下の5点に絞られます。
(1)授業時間厳守の先生。私自身通訳業務で多忙なので、授業時間が延びてしまうと次に仕事がある場合、差しさわりが出てしまうからです。
(2)質疑応答をしやすい雰囲気。授業中の適度な緊張感は大事ですが、質問しづらかったり、こちらが萎縮してしまったりするような授業では自分の実力が発揮しにくいと思います。
(3)講師が各受講生に適切なアドバイスをくれること。受講生の長所短所を的確に把握してくれると、実力も伸びやすくなります。
(4)講師の声が大きいこと。これは教える側の基本ですが、声が小さかったり、話し方が冗長だったりすると、授業も間延びしてしまいます。
(5)講師の人間的な魅力。人格面で引かれる、あの先生のようになりたいなど、講師の人間性も受講継続のカギとなります。
第7ヵ条 受講を決めたら事務手続きの確認を
 学校への申し込みの際、クーリングオフや途中解約のことなどぜひ確認しておきましょう。また、欠席した際の資料配布や振替授業の有無などもチェックします。学習で伸び悩んだときのカウンセリング制度があれば、さらに心強いでしょう。
第8ヵ条 入学が決まったら、自分の予定に組み込んでおく
 受講が決定したら、すべてのレッスン日を手帳に書き込みましょう。「毎週木曜日の夜は○○クラスと覚えているから大丈夫」と記憶だけに頼っていても、忘れてしまったり他の予定を優先したりということになりかねません。それよりも習うと決めたらきちんと全日程を手帳に書き込むことで「これから自分は○○を勉強するのだ」と自分の意思を再確認できます。つまり、自分への宣言でもあるのです。周囲にも公言すれば挫折を防げるかもしれませんね。
第9ヵ条 専用ノートを作る
 コースが決まったら、ぜひ専用ノートをそろえましょう。ルーズリーフですとバラバラになってしまいますが、一冊のノートをあえて入手することで、決意も新たにできます。家にある適当なノートではなく、この際、お気に入りのノートを買えば気分はますますアップするはず。ノート一冊をやり遂げることを目標にすれば、学びへの意欲も高まりますし、一冊終了すれば達成感も味わえます。ノートの表紙には開始の日付と終了の日付もぜひ記入しましょう。また、ノートの始めに目標を書くのもオススメです。たとえば英語のクラスであれば、「このコースを通じてTOEICスコアを○○点アップする!」と目標を数値化するのです。こうすることで能動的な学習につながります。
第10ヵ条 習い事は自分への投資
 忙しい生活の中、何か一つでも自分へ投資することは大切です。旅行やグルメ、マッサージなどの「ご褒美」も必要ですが、一時的なものよりも継続して自分自身が向上できるような学習は生きる上で大きな喜びをもたらしてくれます。ちなみにクロネコヤマトの元会長・小倉昌男氏は次のように述べています。
「まず目の前の目標をがんばって達成し、その次にもう一段上の目標を立てて頑張ってみる。」
(「福祉を変える経営」日経BP社、2003年)
 つまり目標を抱き、継続して続けること。それが学びであり、生涯の蓄積となります。この春からぜひ皆さんも新しいことに挑戦してくださいね!

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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