アメリカの臨床心理学者メアリー・マッキニー博士は、「モノを探すのに毎日5分以上費やしているのであれば、あなたの生産性は妨げられている」と述べています。ある調査では会社員が探し物に費やす時間は年間6週間分に相当するとか。必要なものがすぐに見つからなければ作業は中断され、イライラは募り、外出間際であれば電車に乗り遅れるのではと焦り、お礼状を出そうにも住所が見つからなくて礼を失してしまう等々、探し物が原因でさまざまな弊害が出てきてしまいます。そこで今回は効果的なファイリング術をご紹介します。
今は空前の手帳術ブーム。書店には手帳やファイリングなど情報整理関連の書籍があふれています。どの本もアイデア満載で今すぐにでも導入したくなるものばかり。でもここでまず考えなければいけないのは、「自分はどういう目的でファイリングをするのか」ということ。美しいファイリング法を取り入れても必要なときに必要なものが取り出せなければ、自分にとっては有益になりません。ファイリングはfor
the sake of filingなのではなく、皆さんの日々の生活を楽にするためのものでなければならないのです。ちなみに私にとってのファイリングの究極目標は、私がいなくても家族にファイルを取り出してもらえるようにすること。たとえば私が万が一病気で入院しても「3段目の引き出しの手前に○○ファイルがあるから取ってきて」と言えるようにすることです。
一番安くて手っ取り早く用意できるのはA4の封筒です。これはわざわざ新しいものを買わないまでも、自宅に送られてくるDMや仕事関連の使用済み封筒で十分事足ります。市販のバインダーやパイプ式ファイルなどは丈夫な反面、値段もかかります。色の種類も沢山あり、色分けすべきか、または規格が製造中止になったらその後どうやってファイリングを続けるかなどといったことも考えなければいけません。その点、封筒なら破れても新しいものに替えるだけでOK。かさばらず、書類をポンポン入れさえすれば良いので扱いやすいという長所があります。
ファイリング収納に一番お勧めなのは専用のファイリングキャビネット。「脇机」「2段ワゴン」などとも呼ばれており、インターネットの中古オフィス家具店なら送料込みの一万円以下で入手できます。引き出し式キャビネットの利点は、引き出しの一番奥まで入れられること。ちなみに我が家はマンション住まいで押入れもマンション寸法。この奥行きに合わせて押入れ下段に2段ワゴンを入れています。プラスチック製押入れ収納家具より出し入れが簡単で重宝しています。
まず、ファイリングキャビネットに収納しやすいように封筒の上部(封の部分を含む)4センチほどを切り落とします。封筒のサイズとA4の紙サイズを同じにすれば、封筒への出し入れが簡単になります。次に封筒の左上に内容のタイトルを書きます。私の場合、タイトルはすべて英語の大文字で記入し、「BANK」「SHOP
CARDS」「CAR」「DOCTOR」などと記しています。アルファベットの方が並べやすく、引き出しから取り出しやすいからです。タイトルを記入したら、引き出しの手前からAからZへとタイトル順に並べていきます。
いざ封筒ファイルを作成すると、つい沢山の項目を作ってしまいがち。でも最初のうちは分類を大まかにすることをお勧めします。なぜなら封筒のかさだけでキャビネットが膨らみ、せっかくの引き出しスペースがもったいないからです。たとえば「BANK(銀行)」ファイルを作ったとしましょう。始めのうちはA銀行、B投資信託銀行など、銀行関連の全書類を入れておきます。そして使っていくうちにA銀行の書類だけを頻繁に参照するようになったら、その時点でA銀行専用の封筒を新たに作ればOKです。
私の場合、プライベートも仕事関連ファイルも同じ2段ワゴンに収納しています。ご参考までに私のカテゴリーをご紹介しましょう。
CARDS:クリスマス・年賀状リスト。送付・受領記録を毎年作成し、クリスマスカードの予備やクリスマス関連シールなども入れておきます。毎年11月になると前年度のリストを参照しながら今年の送り先リストを作成し、カードや年賀状の必要枚数を計算してから購入しています。
DOCTOR:医療関連ファイル。健康保険証、診察券、領収書(フリーランスなので医療費控除のため保存しています)、人間ドックの検査結果表など。
SAITAMA:現在住んでいる埼玉関連のファイル。区役所でもらったマップ、休日診療所リスト、住民票申請用紙など。申請用紙は1枚予備を常に手元に置き、いざ申請の必要が出たとき自宅で書いてから区役所へ行けば、窓口で手間取ることなく便利です。
SHOP CARDS:その名のとおり、ポイントカードあれこれ。普段使うカードはお財布に入れてありますが、年に数回しか使わないものはこのファイルへ。お店に出かけるときに取り出します。
TAX2005:来年3月の確定申告に必要な書類。源泉徴収票、給与明細、保険控除証明書など。税務署へ行くときはこの封筒ごと持参します。
会社の場合、帳簿書類などは7年間保存することが法人税法で定められています。個人の場合も税金や金銭関連の書類は念のため7年保存することをお勧めします。
そのほかの書類については、3年、3ヶ月などをめどに整理します。たとえば3年間使わなかったポイントカードは思い切って処分。仕事に使うと思って集め続けた切り抜きファイルも、3年間中身を見ていなければゴミ箱へ。今は情報がどんどん更新され、新しいものが入ってくる時代です。古いものへの未練より新しいものを貪欲に取り入れるという気持ちでモノを処分していきましょう。ただし、契約書などの重要書類は別。こちらは契約解除まで必ず保管しておきます。いずれも処分目安のキーワードは3と7。自分なりの単位でこまめに整理するのが情報管理のコツです。
第8カ条でで処分の時間的目安がわかったら、あとは処分あるのみですが、どうしても迷ってしまう場合、そのファイル自体を一定期間「触ったか触らなかったか」を基準にしてはいかがでしょう?たとえば仕事用の新聞スクラップファイル。3年間、ファイル自体に一度も触らず、キャビネットの中に眠ったままというのであれば、そのまま中身を見ずに処分しましょう。一定期間一度も触らず、中身も見ていなければ、今後もその可能性は限りなく低いはず。私自身、そうして処分した結果、後悔したり眠れないほど悔やまれたり・・・ということは一度もないです。断言できます!
すべてを迷わずに捨てられるに越したことはありませんが、人間、そう簡単に決断できないもの。「せっかく集めたのに」「○○の思い出があるから・・・」など、モノが私たちに無言で訴えてくるメッセージは限りなくあります。
でも人間のカラダが食事と運動で新陳代謝を良くしなければいけないのと同様、持ち物も循環させていく必要があります。情報は生かしてこそ、その本領が発揮されるもの。すっきりしたファイリングで探し物時間を減らし、皆さんの本来の夢や目標に向けて毎日の限られた時間を有効活用できると良いですね。