INTERPRETATION

第38回 The game

木内 裕也

Bazinga!

 今週の表現はThe game。表現としてはまったく難しいものではありませんが、日本人が不得意とする定冠詞のTheを用いた表現です。通常の会話で、Did you watch the game?「試合を見た?」と聞かれたら、Which game?「どの試合?」となります。定冠詞のTheは、既出の内容を受けて使われますから、突然Did you watch the game?と聞かれたら、どの試合を指したTheであるのか、知らないと会話になりません。興味深いのは、頻繁にThe gameという表現が会話で使われている事実です。

 

 例えば、すでにシーズンが終わってしまいましたが野球の試合がある日に、Are you going to watch the game?と聞かれれば、聞いた人の頭の中には、「The gameでどの試合を意味しているか、相手の人と共通理解が取れている」という仮定が存在します。私の住むミシガン州であれば、それはDetroit Tigersの試合ですし、ボストンであれば、Red Soxの試合です。秋の土曜日であれば、地元大学のフットボールの試合です。日曜日の日中ならプロフットボールですし、夕方ならアイスホッケー。私はサッカーこそ興味を持っていますが、他のスポーツはあまり見ませんから、Are you going to watch the game tonight?と聞かれても、どの試合、どのスポーツに言及しているのかわからないこともあります。

 ちなみに、2020年に東京で開催されるオリンピックは、英語で表現するならThe Olympics、The Olympic Games、またはThe Gamesと複数表記されます。

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木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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