第21回 Americanization & Globalization
今週のテーマはEntrepreneurshipです。まずは復習からはじめましょう。
これまでGlobalizationを考える中で、AppaduraiのScapeという考えが有益であることを解説しました。例えば人が仕事や留学のため、または旅行目的で世界を飛び回るのはEthnoscapeと呼ばれます。Ethno-とは、人の意味を持つ接頭語ですね。同様に、ビジネスや様々な取引でお金が飛び交うことは、Financescapeといいます。為替情報が気になったり、外国のオンラインショップから商品を購入できたりするのはFinancescapeの一部です。これらのScapeの1つに、Ideaの行き来を指すIdeoscapeという言葉があります。今回のテーマであるEntrepreneurshipはIdeoscapeの1つです。
例えばLibertyやFreedomという考えは、アメリカ的なものと考えられていますが、元はフランスから来たもの。その前は、例えばギリシャなどで議論された概念です。したがって、「自由」などという非常にアメリカ的と思われている概念も、グローバル化の一部であることがわかります。自由の女神がフランスからの贈り物である事実も、Ideoscapeを象徴していますね。また、最近アメリカではアジアの概念としてZen(禅)やConfucius(儒教)が関心を集めています。これももちろんIdeoscapeの一部です。
Entrepreneurの場合も、スペルから想像がつくかもしれませんが、フランス語の影響を受けている単語です。英語で使用される場合には、リスクを背負いながら物事を行い、何らかのプラスの結果を期待する人をEntrepreneurと呼びます。多くの場合、すでにご存知の通りビジネスの世界で使われます。
特に1980年代以降のIT産業で、Entrepreneurが多く生まれました。Microsoft、Apple、Facebookなどすべて、Entrepreneurの1つとされていますね。しかしよく考えてみれば、例えば古くから日本にある企業も、Entrepreneurが始めたもの。日本語で「起業」ということからわかるように、最近始まった傾向ではありません。
しかし今回のレクチャーで何より強調したいのは、Entrepreneurshipがビジネスでだけ使われる言葉ではない、ということです。例えば先日、私が教える大学で会議が行われました。会議は日本の大学構造で言う学科長と、来年度に新しく開講される授業のアイデアを話し合うものでした。その会議の中で、学科長が「Entrepreneurshipを持ってアイデアを出しあってほしい」とコメントしたのです。授業の提案をしたり、授業を教えることがビジネスの観点から言うEntrepreneurshipとは少しずれていますが、アイデアを開拓していくという意味では、共通するところがあります。
日常生活においても、例えば部屋の内装に手を加えるとか、家具を新しくするという部分にも、Entrepreneurshipを発揮できます。収益を上げる、という目的だけではなく、気持ちが一新されるなどという目的も、充分にEntrepreneurshipの精神です。そう考えると、Entrepreneurshipとは、いかにして目指すものを手に入れるか、いかによりよい生活を求めるか、ということと大きな関係があるのでしょう。
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