INTERPRETATION

第15回 Americanization & Globalization

木内 裕也

American Culture and Globalization

 前回のレクチャーは本筋から少しそれて、日米文化比較を行いました。しかし今回はまたグローバリゼーションのレクチャーに戻ります。今週のテーマはビジネス。ビジネスにおいて、グローバル化がどう起きているか考えてみます。

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lecture15_1.gifそもそも、ビジネスのグローバル化とは、世界的に有名な大企業に勤める人々だけの問題ではありません。確かに、世界的企業に勤める人々は頻繁に海外とのやり取りを経験していることも確かでしょう。しかしより規模の小さな企業であっても、海外の取引先を持っていたり、消費者は外国にいるということもあります。また、外国為替市場の状況に影響を受けたり、原油価格の変化に影響を受けたりすることもあります。ですから、グローバル化の影響はどの企業にもあります。そして、消費者にとっても、同じようにグローバル化の影響はあります。つい最近は土用の丑でしたが、「やや高価な国産のうなぎにするか、それとも少し休めの外国産にするか」と悩んだ人もいるでしょう。もしくは「外国の自動車を買いたいけど、やっぱり日本メーカーがいいかな?」と悩む人もいるかもしれません。また、日本ブランドの電気製品といっても、その部品の多くが海外生産ということもあります。
 

lecture15_2.gif このように、誰もがグローバル化の影響を受けるときには、「グローバル・スタンダード(世界基準)」という言葉が頻繁に使われます。世界ビジネスでその基準となるのは日本のやり方か、アメリカのやり方か、それともどこか他のビジネスモデルなのか? この点を今週は考えたいと思います。
 

lecture15_3.gif まずはアメリカのビジネススタイルから。例えば組み立てライン(流れ作業)はFordismといわれるように、アメリカのFord社が非常に大きな影響を与えたものとされています。これは人間の作業を非常に単純化し、その反面仕事の効率はそれまでのスタイルより向上したとされています。また、とにかく数字で業務の効率性を判断し、その数字をいかに向上させるかを考えるのも、非常にアメリカ的とされます。CSR(Corporate Social Responsibility)という考えは日本には古くからありましたが、このような言葉はアメリカが発信地ですね。
 

lecture15_4.gif 日本流のビジネススタイルで有名なのは、TPS(Toyota Production System)です。日本が発祥の地であるのを示すのは、その名前だけではなく、Andon、KaizenなどTPSで使われる英語の表現が日本語の言葉(行灯や改善)をそのまま使っていることからもわかります。また、人を尊重するビジネスというのは、日本の流れに沿っているといえるでしょう。ただ数字にとらわれるのではなく、数字には見えないビジネスの価値を認めるのは日本的です。
 

lecture15_5.gif 同じように、日本やアメリカだけではなく、各国にそれぞれ特徴的なビジネスの行い方があります。それでは国際ビジネスでスタンダードを見出すとしたら、どうすればよいのでしょうか? その答えは簡単なものではなく、業種や各企業の力関係によるものも大きいのが現実です。そしてスタンダードが世界に1つしかないのか、それとも複数共存が可能なのかも、その状況しだいでしょう。しかし私が通訳者として様々な会議に参加し感じたのは、Recognition、Appreciation、Respectといったキーワードで示される内容が、成功するビジネスモデルにつながるということ。これはお客さんに対してだけではなく、同僚や上司、部下に対しても同じです。ビジネスがお金のやり取りではなく、人と人のやり取りと本当の意味で気づくだけでも、それは価値のあることでしょう。

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記事を書いた人

木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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