INTERPRETATION

第5回 Beauty

木内 裕也

American Culture and Globalization

今回のレクチャーはBeautyがテーマです。

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 レクチャーはまずグローバル化の影響として考えられる2つのものを考察します。1つ目はHomogeneity。Home-というのは、「単一の」という意味の接頭辞ですから、同一性ですね。日本の文化や社会をHomogeneous societyと呼ぶことがあります。変化が見られるとはいえ、アメリカやその他の諸国と比べると、やはり文化的に似たものが多いのが日本の現状でしょう。それとは逆なのが、Heterogeneityです。Hetero-は「異質の」という意味ですから、様々な違ったものが混ざっている、という意味の単語。アメリカの社会はよくHeterogeneous societyと呼ばれます。グローバル化は様々な影響を社会に与えますが、これらの2つの概念はその中心的なものといえます。

例えば映画を考えて見ましょう。ハリウッドは世界で第2番目に大きな映画産業です(1番はインドのBollywoodです)。その影響はグローバル化によって大きくなり、日本でも多くのハリウッド映画を見ることができます。これは文化保護の規制が厳しいヨーロッパ各国でも同じ。つまり、世界のどこでも同じような映画が楽しまれているということになります。食べ物であっても、差異はあれ寿司が世界で食され、日本にBurger Kingがあるように、やはり同質性が進んでいると考えることができます。しかし、国内だけを考えてみれば、今まで楽しめなかった映画を見ることができたり、それまで食べることの無かった食事を食べられたりと、異質なものを楽しめる環境にもあります。

 

lecture5_2.jpgそれではBeautyではどうでしょうか? 非常に興味深いのは、バービー人形のイメージが美しいとされる傾向が各国にあることです。これは白人の多い国や地域だけの話ではありません。アフリカ系アメリカ人の子供も、肌が白くて金髪の人形を好んで遊ぶという統計もありますし、その様な内容のドキュメンタリーもアメリカで話題になりました。世界的に有名なCosmopolitanという雑誌の表紙を見てみれば、「好ましい」とされる容姿が非常にHomogeneousなのがすぐにわかるでしょう。

 

lecture5_4.jpg肌が白いことへの憧れは、日本でも「美白」として知られいますが、東南アジアでも同じです。インドのコマーシャルでは、美白クリームを使っていなかった少女が就職試験に落ちたり、彼氏に振られたりします。しかし美白クリームを使うと、見事にフライトアテンダントの試験に合格して成功したり、夢のボーイフレンドの心を手にします。

 この様な流れが続くと、どうなるでしょうか? 特に望ましいとされる容姿が写真であればPhotoshopなどの技術で手を加えられたものであり、人形であれば不可能なウエストサイズであったりするわけですから、「夢の姿」は一生手に入れることができないものなのです。その結果、「いくら頑張っても望ましい自分にはなれない」「今のままの自分では不十分」といった考えが継続されることになります。このようにある特定の姿だけが望ましいと思われると、そのマイナスは非常におおきなものでしょう。

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記事を書いた人

木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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