INTERPRETATION

第4回 Borders 2

木内 裕也

American Culture and Globalization

第4回目となる今日の講義は、前回から引き続いてBorderの話です。次第に講義の内容も難しくなってきて、「どうしても分からない部分があるなあ」とか「ついていけるかな」と不安に思っている人もいるかもしれません。今回の録音された講義の冒頭にも私がお話していますが、100%分かろうとする必要はありません。約1年後にこの講義シリーズを修了し、その時に「少し英語力がUPした」とか「なんとなく英語の講義になれたかな」と思えればそれで十分です。最初から全てを理解する必要はありませんし、そのように自分にプレッシャーをかけると、逆効果になってしまうかもしれません。気軽に、分かるところだけでいいから、くらいの気持ちで取り組んでください。

lecture4_1.jpg▶ 第4回のレクチャーはこちらにアクセスしてください。

前回のレクチャーでは、Bordersを知ることによって、自分と他者の境界線を知り、その境界線を越えることの価値を知ることや、新しい世界に挑戦するには何が必要かわかるようになると説明しました。同時に、Bordersは人間が作り上げたものであり、国境や経済区域などニュースなどで耳にするもの以外にも、文化や年齢、性別など様々なものが境界線を生み出すことも説明しました。
 今回のレクチャーでは私の住むEast Lansing市とかつて住んだことのあるBostonの地図を用いています。皆さんも、近所の地図があれば、似たような境界線を引くことができるか考えて見てください。East Lansingであれば、大学のキャンパスとそれ以外には大きな違いがあります。しかしキャンパスの近くは学生が住み、本屋やバー、レストランが沢山ある繁華街を構成しています。そこから少し離れると、静かな環境になって、East Lansing市の東にあるOkemosという市などは、とても裕福な人が住む街として知られています。

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英語ではOn the other side of the train trackという表現があります。日本でも駅の反対側(例えば皆さんが最寄り駅の東口に住んでいるとしたら、西口)はどうも実際の距離よりも遠くの気がする、ということがあると思います。それと同じように、この英語の表現は「線路の向こうは慣れない世界」というイメージのある表現。East Lansing市には127号線という高速道路が南北に走っています。この西側はLansing市で、East Lansingより治安がよくないとされています。またEast Lansingに住んでいる人にとって、実際の距離よりも遠く感じられる世界。こういった心理的なBordersはきっと皆さんの周りにも沢山あるでしょう。それを乗り越えると、「今まで知らなかった美味しいパン屋」など、思わぬ発見があるのです。

 

ボストンでも、Washington Streetの南は午後5時を過ぎると治安が悪いと言われています。このように様々なBordersが私たちの生活の中には存在しています。それだけではなく、当たり前と考えている男女差や飛行機のエコノミークラスとファーストクラスの間にあるBordersも、少し考えてみると思わぬ発見があります。トイレの例を考えれば、講義の中で解説があるとおり、親が異性の子供を何歳になったら1人で公衆トイレに行かせるか、何歳までは自分と一緒にトイレに入れるかという問題が、アメリカで大きな話題になっています。特に子供の安全の観点から、これは難しい問題を提起しています。

 

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このようにきっと今までは特に考えたことがなかったであろうBorderの概念を掘り下げた結果、何かの新しい発見があれば幸いです。次回はBeautyの概念をお話します。

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木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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