第247回 お寿司を食べているときに思い出す詩
お寿司。カレーライス。ハンバーグ。
子どもが好きな食べ物の上位に必ず入ってきますよね。
お寿司を食べながら、子ども心に溢れたふざけた詩で、魚がオチになる詩があったなあと、ふと思い出しました。
ネズミとカラスと魚が出てくるのですが、まあ読んでみてください。
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If a mouse could fly
Christina Rossetti
If a mouse could fly,
Or if a crow could swim,
Or if a sprat could walk and talk,
I’d like to be like him.
If a mouse could fly,
He might fly away;
Or if a crow could swim,
It might turn him grey;
Or if a sprat could walk and talk,
What would he find to say?
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ネズミが空を飛べるとしたら
クリスティーナ・ロセッティ
ネズミが空を飛べるとしたら
カラスが水を泳げるとしたら
魚が歩いて話ができるとしたら
なってみてもいいかな
ネズミが空を飛べるとしたら
飛んで逃げるだろうし
カラスが水を泳げるとしたら
灰色になるだろうけど
魚が歩いて話ができるとしたら
何を話そうと思うのかな
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なかなかふざけた詩ですよね。ただ、リズムが小気味いいので、何だか許せてしまうんです。
If a mouse could fly,
Or if a crow could swim,
Or if a sprat could walk and talk,
I’d like to be like him.
ネズミが空を飛べるとしたら
カラスが水を泳げるとしたら
魚が歩いて話ができるとしたら
なってみてもいいかな
なぜネズミとカラスと魚が選ばれたのかは謎ですが、それぞれに欠けている能力が割り当てられています。
現実にそうなったらと、ちょっと想像してみたのですが、けっこう強烈なイメージですよねえ。ネズミが飛んでて、カラスが泳いでいて、魚がしゃべっているという世界。なかなか怖いです。
If a mouse could fly,
He might fly away;
Or if a crow could swim,
It might turn him grey;
Or if a sprat could walk and talk,
What would he find to say?
ネズミが空を飛べるとしたら
飛んで逃げるだろうし
カラスが水を泳げるとしたら
灰色になるだろうけど
魚が歩いて話ができるとしたら
何を話そうと思うのかな
ネズミは猫から逃げるために、走るのでなく飛べばいいじゃないかという発想が、なかなかぶっ飛んでいますよね。
そして、カラスが泳ぐとしたらどうなるのかと期待に胸を膨らませて読むと、まさかの、黒い色が水で落ちて灰色になるという結末!くだらなさすぎて詩としてどうなのかとも思いますが、個人的には好きです。
そして、魚が話ができるとしたらどんなことを話すのかと期待にワクワクして読み進めると、「何を話そうと思うのかな」と、まさかの疑問文!答えはないんかーい!
詩としては、答えを示さないほうが、想像の余地があり、謎めいていて余韻があるという効果はあります。
自分だったら、お寿司を食べているときに思い出してしまったので、魚がしゃべりそうなことは「おい!醤油をつけすぎるなよ!俺をちゃんと味わえ!」とかかな。いや、お寿司になってる時点で、もうしゃべれないじゃないか!
う~ん、詩がくだらなすぎて、自分の発想までくだらなくなってしまいそうです。
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今回の訳のポイント
この詩の作者は、清明かつ儚げな詩が特徴のクリスティーナ・ロセッティ。子ども向けの詩も多く残していて、今回のような短くてとんちが効いた詩も多く、19世紀の詩人としても芸の幅が広いなあといつも感心します。
詩人クリスティーナ・ロセッティは大量の詩を書き残していて、自分の手元にある洋書の全集は、注釈などを含めると、1000ページを超えています。
そして、この詩の最大の難関が「魚」です。
Or if a sprat could walk and talk,
What would he find to say?
魚が歩いて話ができるとしたら
何を話そうと思うのかな
ここでの魚は sprat で、厳密にはニシン科の魚で、イワシより少し小さくキビナゴのイメージでよく食される魚です。
こういうとき、いつも悩むんです。「ニシンが歩いて話ができるとしたら」とすると、日本人がイメージするニシンのサイズ感とは異なりますし、「キビナゴが歩いて話ができるとしたら」とすると、姿かたちはイメージ通りですが、それは違う種類の魚になってしまいます。というか、ニシンやキビナゴと言うと、なぜわざわざ限定したのかという別の疑問が湧いてしまいます。
そうすると、最大公約数的な「魚」とするのが一番良さそうなのですが、魚が話ができるなら聞いてみたい気もします。