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第243回 終電を逃したときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

終電を逃す。

仕事だったっり、パーティーだったり、理由は様々ですが、やっぱり、友人と時間を忘れて盛り上がっていたから、というのが一番多いかなと思います。

終電を逃し、ピューピュー夜風吹く中タクシー待ちの列に並んだり、何駅分もトボトボ夜道を歩いて帰ったり。

そんなときに思い出す詩があります。

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Who Knows The Joys Of Friendship?
Nicholas Rowe

Who knows the joys of friendship?
The trust, the security, and mutual tenderness,
The double joys where each is glad for both?
Friendship, our only wealth, our last retreat and strength,
Secure against ill fortune and the world.

*****

友情の素晴らしさって分かるかな?
ニコラス・ロウ

友情の素晴らしさって分かるかな?
信頼、安心、支え合い
お互いの幸せを喜ぶから喜びも二倍
友情こそ、唯一無二の豊かさ
最後の避難所であり、強さの源泉
不運や世間から守ってくれる

*****

詩のタイトルの通り、友情の素晴らしさが5行に詰まっていますね。

The trust, the security, and mutual tenderness,
信頼、安心、支え合い

友人との信頼とは、どんなことも率直に話せること、困ったときに助けを求められること。安心とは、ごちゃごちゃ説明しなくても、事情や思いを理解してくれること。支え合いとは、相手のために時間や手間を惜しまないこと。

友人だからこそ理解してくれるという期待があって、聴いてほしい話があって、そうやって会って話し始めると、話の奥底にある思いをすっと理解してくれて、他の人にはない安心感を得られる。

これだけで友情は素晴らしいと思えるのですが、もっともっと素晴らしいことがあります。

The double joys where each is glad for both?
お互いの幸せを喜ぶから喜びも二倍

自分の喜びだけでも嬉しいですが、それを友人に伝えると、まるで自分事のように喜んでくれる。自分の喜びを喜んでくれる姿を見ると、嬉しくなる。そうすると、喜びは二倍になる。

これは考えただけで、ニヤニヤ嬉しくなりますよね。

ご飯を食べながら、「これこれこういう事があってさあ」と嬉しかったことを話していると、テーブルの向こうで自分と同じくらいニコニコしながら「すごいじゃん!さすが!絶対うまくいくと思ってた!いやあ、良かったあ!」と言ってくれて、二人してホクホクになれるという、友情の魔法ですね。

Friendship, our only wealth, our last retreat and strength,
友情こそ、唯一無二の豊かさ
最後の避難所であり、強さの源泉

友人には色々な種類がありますが、同じような境遇を共に乗り越えて来たような友人は、戦友とも言える固く濃い絆で結ばれますよね。他の人じゃ代わりにならないオンリーワンの存在。それは、まさに人生の中でも得難い唯一無二の宝物と言えますね。

だからこそ、悩んで困ってどうしようもなくなったときに頼れる避難所のような存在であり、頑張ろうと思わせてくれる強さの源泉になります。

さらに、友情の素晴らしさの神髄とも言える最強の一行で、詩は締めくくられます。

Secure against ill fortune and the world.
不運や世間から守ってくれる

これは泣きますねえ。友人とは、不運だけでなく、世間からも守ってくれる存在であるというのが、胸にグッときます。

お互いを認め合い励まし合う友人同士にとっては、世間一般の評価基準なんて関係ないんですよね。その人の唯一無二の魅力を知っているから、どんなことを外野が言っていても、全く気にしないし、気にするなと自信をもって言える。

この詩を読むたびに、励まし励まされてきた友人たちの顔が思い浮かびます。しばらく連絡を取っていなかった友人に、「元気?」とメッセージを送りたくなってしまいます。

*****

今回の訳のポイント

友情の素晴らしさを高らかに謳いあげたこの詩。作者のニコラス・ロウという詩人が生きたのは17世紀の終わり。17世紀って!300年以上も昔なのに、心に響きまくる言葉!

訳すうえでの最大のポイントは、そのタイトルです。

Who Knows The Joys Of Friendship?
友情の素晴らしさって分かるかな?

Who knows …? とは「誰が…を知っている?」という直接的な意味でなく、「誰が…を知っているだろうか、いや、誰も知らない」という反語的な意味になるのが一般的です。

そして、大問題なのが、know という単語をどう訳すかです。

一般的には、「知っている」と訳されますが、「友情の素晴らしさって知っているかな?」とすると、知識として聞いたことがあるかどうかという響きになってしまいます。経験や実感として友情の素晴らしさを感じ取り、その意味を理解しているかとすると、「分かる」という言葉がふさわしいと言えます。

いったい何歳まで終電を逃し続けられるのだろうと思います。何歳になっても、時間を忘れて話し込み、気づいたら終電を逃してしまうくらいに大切な友人と人生を過ごしていたいものです。

Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOにて経理・人事、プロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーション入社。英語学習プログラムの開発・管理を担当。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学。読書会を主宰したり、NPOでバリアフリーイベントの運営をしたり、泣いたり笑ったりの日々を送る。

END