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第224回 海外旅行に行きたくなったときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

海外旅行の醍醐味は、異なる文化を体験することだと常々思います。

自分の国では当たり前のことが、ある国では当たり前ではない。その事実を身をもって知ることで、人間としての幅を広げてくれるように思います。

ヨーロッパの夏は夜がいつまでも明るかったなあと思い出に浸っていたら、ある詩を思い出しました。

夜8時でも外がまだ明るい。そんな国をイメージして読んでみてください。

*****

Bed in Summer
Robert Louis Stevenson

In winter I get up at night
And dress by yellow candle-light.
In summer, quite the other way,
I have to go to bed by day.

I have to go to bed and see
The birds still hopping on the tree,
Or hear the grown-up people’s feet
Still going past me in the street.

And does it not seem hard to you,
When all the sky is clear and blue,
And I should like so much to play,
To have to go to bed by day?

*****

夏と「おやすみなさい」
ロバート・ルイス・スティーブンソン

冬は まだ暗いうちに起きて
ろうそくの明かりで着替える
夏は 正反対
まだ明るいのに 寝なきゃいけない

自分が寝床に入ろうとすると
鳥たちは まだ枝の上をぴょんぴょん歩いてるし
大人たちは まだせわしなく
通りを行きかっている

こんなのひどくない?
空はまだ青く澄み渡っているのに
もっと遊びたいのに
まだ明るいのに もう寝なきゃいけないなんて

*****

夏のヨーロッパに行ったことがあるならば、この子どもの気持ちがよく分かるはずです。

In winter I get up at night
And dress by yellow candle-light.
In summer, quite the other way,
I have to go to bed by day.
冬は まだ暗いうちに起きて
ろうそくの明かりで着替える
夏は 正反対
まだ明るいのに 寝なきゃいけない

まだ明るいと思って時計を見ると、もう8時。日も傾き、そろそろ暗くなってきて夕方かなと思うと、夜10時。

大前提として地球は丸いので、土地によって気候が異なり、それに伴って根本的な暮らし方に違いがあることを、海外に行くと体感するわけです。

「まだ暗いうちに起きて」と言うと、イギリスの大学院を回って旅行した時のことを思い出します。

イギリスの北の方のとある町の小さなホテルに泊まったとき、朝ベッドサイドの時計は7時と言うのに、外は真っ暗。「さすが北は朝が遅いな」と思いながら食堂に行くと、スタッフのみなさんが何やらそわそわしていて、おかしいと思って尋ねると、「まだ6時ですよ」と。そう、時計が1時間進んでいたんです!

I have to go to bed and see
The birds still hopping on the tree,
Or hear the grown-up people’s feet
Still going past me in the street.
自分が寝床に入ろうとすると
鳥たちは まだ枝の上をぴょんぴょん歩いてるし
大人たちは まだせわしなく
通りを行きかっている

子どもは「もう寝なさい」と言われ寝床に行くわけですが、大人たちの夜は長く、まだ生活が続くんですよね。

子どものころ、わが家は両親の友人が集まることが多く、大人たちが盛り上がっている横で、「おやすみなさい」と言って寝なければいけないことがよくありました。寝床に入ってからも、大人たちがわいわいがやがや楽しんでいるのが聞こえて、「大人ってずっと遊べていいな」と思ったものです。

夏の夜に「おやすみなさい」と言うだけの話なわけですが、子ども目線で考えてみると、いろいろな思い出がよみがえる気がしませんか。

*****

今回の訳のポイント

子ども目線で、季節による朝や夜の長さを描いたこの詩。日本よりも、その長短の差が大きい国では、なお一層この感覚が響くのではないでしょうか。

訳としてのポイントは、最後にあります。

And does it not seem hard to you,
When all the sky is clear and blue,
And I should like so much to play,
To have to go to bed by day?
こんなのひどくない?
空はまだ青く澄み渡っているのに
もっと遊びたいのに
まだ明るいのに もう寝なきゃいけないなんて

Day は「一日」という訳が一般的ですが、そもそもは日の出から日没までの「昼間」や「昼間の光」を指しています。

そういうわけなので、by day というのは、「昼間のうちに」という意味になりますが、「昼間のうちに寝なきゃいけない」と言うと少しおかしい響きです。

ならば、「昼間の光」という意味のほうで考えて、「明るいうちに」とすれば解決!

Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOにて経理・人事、プロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーション入社。英語学習プログラムの開発・管理を担当。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学。読書会を主宰したり、NPOでバリアフリーイベントの運営をしたり、泣いたり笑ったりの日々を送る。

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